ガルバス監督はエミー賞の受賞歴があり、ドキュメンタリーを得意とする。虐げられた女性を描くことも多く、インスタグラムでは女性の中絶の権利を求める意見を発表した。メーガン妃はドキュメンタリーが自分の望む内容にならない場合に備えて、「責任を回避、予防線を張っている」と英メディアは分析した。
これは「デジャブ(既視感)」とも言われる。20年に発売された暴露本『自由を求めて』はジャーナリストのオミッド・スコビーらが作者だが、当初、メーガン妃は「情報提供するなどして協力したので、内容は正確だ」と胸を張っていた。しかし、本の評判が芳しくなく売れ行きも悪いと知ると、「いっさい関わっていない」と言いだした。それが、メーガン妃のスタッフへのいじめ裁判の過程で、彼女が作者に詳細を伝えたことが発覚すると、「忘れていた」と話した。
王室批判が急速にトーンダウンしたのは、王室のスリム化を進めるチャールズ3世の動きと無関係ではない。
君主が外遊や健康問題で不在の時、摂政として代行する上級王族メンバーから、ハリー王子とアンドルー王子を除外するため、国王は近く関係法令の改正案を議会に提出する予定だ。
また国王の戴冠式は来年5月6日にロンドンのウェストミンスター寺院で行うと決めた。ちょうどハリー王子とメーガン妃の長男アーチー君の4歳の誕生日と重なる。夫妻は戴冠式への参列を優先させるとみられるが、招待状が送られてくるかわからない。
夫妻を見守ってきた女王はもういない。王室の義務は避けるが権利は要求するやり方は、新国王に通じるだろうか。(ジャーナリスト・多賀幹子)
※週刊朝日 2022年11月11日号