しかし、大学の経済学でこうした内容のリポートを書いてみたところ、まさかのC判定をとったのです。C判定とは、日本でいう「可」であり、ギリギリ単位がもらえる、というレベルです。
きっとスミス氏はそこで、「悔しい」と思ったのでしょう。一念発起して会社を起こし、結果、大成功を収めました。
そしてこれは有名な話なのですが、会社の本部には、彼が大学時代にとったC判定のリポートが飾られているのだそうです。
そこに彼の「やってやったぞ」という気持ちが強く表れていると思います。
自分のやりたいことを実現するために、一度も失敗せずに、自分がしたいすべてのことを成し遂げられる人なんて存在しません。
しかし人は、自分自身が失敗したり、低い評価を受けたりすることに対して非常に敏感で、恥ずかしいことのように感じ、周囲の人間に、さも自分は努力していないかのように振る舞いたがる傾向があります。
■勉強しているのに「ぜんぜん勉強していない」と言う心理
たとえば、テスト前に、相当な時間をかけて勉強したのに、「自分は全然勉強していない」なんて言う人がいませんか?
こういう人はつまり、失敗すること(悪い点数をとること)に対して、保険をかけているわけです。
自分を「がんばらなくてもできる人間」のように見せたがり、努力する姿もまわりに見せようとせず、そして失敗はとてもダメなことだと考えています。
こう思ってしまう原因として、学校の教え方や、勉強に対する親の接し方などが大きく関係していると思います。
テストの点数が悪ければひどく怒られたり、作業などで失敗をすると厳しく注意されたりといった教育の中では、「間違えてはいけない」という思いがどんどん強くなるのかもしれません。
もちろん、点数が悪いままでいい、という意味ではありません。
ただ、大人たちが失敗に対してやみくもに怒ってしまえば、子どもの中で、「失敗はしてはいけないものだ」という考えが強く固まっていってしまいます。そうなると、失敗する可能性があるような「少し高い目標」には挑戦しなくなってしまうことでしょう。