このタニノチカラ以降は、TTG対決や皇帝シンボリルドルフの連覇、オグリキャップやトウカイテイオーの奇跡の復活、グラスワンダーとスペシャルウィークの歴史的な大接戦などの名勝負はあったものの、実に30年近くに渡って有馬記念を圧勝する馬は出なかった。

 その流れに終止符を打ったのがシンボリクリスエス。3歳(現馬齢表記、以下同)だった2002年の有馬記念ではタップダンスシチーに半馬身差の勝利をおさめ、4歳となった2003年は天皇賞(秋)を連覇。続くジャパンカップこそタップダンスシチーの3着に敗れたが、引退レースとなる2003年の第48回有馬記念では堂々の1番人気に推されていた。

 ジャパンカップ2着のザッツザプレンティらが飛ばし、タップダンスシチーも先行したレースはハイペースとなり、中団で脚をためていたシンボリクリスエスは最後の直線で満を持してスパート。瞬く間に後続をちぎり捨て、2着のリンカーンに9馬身差で有終の美を飾った。有馬記念での9馬身差勝利は、今なおレース史上最大着差として残っている。

 シンボリクリスエスと同じく、引退レースで有馬記念を圧勝したのが三冠馬オルフェーヴル。2011年に3歳で有馬記念を制し、古馬になってからは仏G1凱旋門賞で2年連続2着と世界にも名をとどろかせた名馬は、2013年の第58回有馬記念を最後のレースとすることが発表されていた。

 そんなオルフェーヴルのラストランは、文字どおりレベルの違いを見せつける完勝だった。勝負どころで他馬の手綱が激しく動く中、オルフェーヴルは後方待機からほぼ馬なりで大外を通って進出し、最終コーナーでは先頭に並びかける勢い。そこからは独壇場で、直線ではあっという間にセーフティーリードを確保すると、クラシックでしのぎを削った同期のウインバリアシオン以下に8馬身差の圧勝。破天荒な三冠馬は最後まで記憶に残るレースを見せてターフを去っていった。

 最後に紹介するのは、2019年の第64回を制した名牝リスグラシュー。5歳となったこの年は宝塚記念を制し、豪州遠征でもG1コックスプレートで歴史的な勝利を挙げていたが、オッズは2番人気に甘んじていた。前年に牝馬三冠やジャパンカップを制し、この年も天皇賞(秋)を快勝したアーモンドアイがいたからだ。

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引退レースの馬が有終の美を飾るケースは多い?