
<私自身、大学時代にエネルギー経済学を少し学び、また、結婚前に仕事をしていた頃に気候変動問題を含む環境問題に携わっていたことがあり、気候変動や地球環境の問題の大切さに日々思いを深くしております>
驚いた。雅子さまが大学時代、外務省時代について触れるのを目にしたことがなかったからだ。
宮内庁ホームページでご結婚以来の会見、文書を読み直してみた。ダイアナ元皇太子妃の事故死に関連し、記者から「英国留学のご経験がある雅子さま」と尋ねられ、「イギリスに2年間留学しておりましたので」と語った97年の会見があっただけで、自ら大学、外務省時代に言及している文章を見つけることはできなかった。
■国民と共に進む一歩
思い返すと雅子さまは皇室入り以来、「キャリアウーマン」だった過去を封印したかのようだった。それが雅子さまの意志だったのか、別の力学が働いたのかは、わからない。とにかくそのように見え、雅子さまの「適応障害」という病名が公表された。そうした過去を踏まえれば、雅子さまが自らキャリアに言及したことは画期的と言っていいと思う。
勝手な想像だが、雅子さまはある種の決心をしたのではないだろうか。コロナ禍で直接国民と触れあえない中、それに適応した新たな皇后像を作っていかなくてはならない。そのために「自分らしさ」を見つめれば、キャリアに行き当たる。それを素直に受け止めたのではないだろうか。
一人で立つ写真は、そんな雅子さまの決意を受けてのもの。そう思うと、すごく腑に落ちる。12月6日には「安定的な皇位継承のあり方を議論する政府の有識者会議」の最終報告骨子として、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる、旧宮家の男系男子が養子として皇族に復帰する、という2案が示された。
「男系男子による継承」をどうするかには触れず、「人手不足」だけに対応する案だ。愛子さまのこれからはどうなるのか、そして娘の将来への雅子さまの思いはいかばかりか。そう考えると、暗くなってしまう。
だが、と思う。雅子さまと愛子さまの絆は、雅子さまの誕生日写真にはっきり写っていた。そう、お揃いヘアであり、リンクコーデだ。雅子さまはこれからも愛子さま、そして国民と共に歩む。だからこそ、変わろうとしている。その一歩が、立ち姿。愛子さま、そして国民へのメッセージに違いない。(コラムニスト・矢部万紀子)
※AERA 2021年12月27日号