仮面をはぎ取る場面からのスタート。誰もが知っている王道の音楽を、村元と高橋だけの2人舞台のようなドラマチックな振り付けで演じていく。
コレオスピンで減点(転倒扱い)が見られたが、こうしたプログラム上の瑕疵(かし)はシーズンを追うごとに修正が加えられるだろう。
何よりも、得点表示が出た直後に会場でわき起こったブーイングには驚いた。フィギュアスケートの試合では本当に珍しいことだ。米国の観客が心に抱いた感動の深さと、その得点が乖離(かいり)していたのだろう。
高橋が言う。
「お客さんがそういう反応を持ってくださったということは、演技的には良かったのかなと思うので、ブーイングを自信に変えて次につなげていきたいなと思います」
■ピークは全日本選手権
リズムダンス(RD)は、今季はテーマが「ラテン」ということもあり、グロリア・エステファンの名曲などをリミックスさせたテンポの速いナンバーを選んでいる。
大会前は苦難もあった。練習拠点の米フロリダを9月末にハリケーン災害が襲った。さらに、大会の約2週間前には村元がリフトの練習で右肩を負傷した。それでも、村元は、
「痛み止めを使うと感覚がまひするのでテーピングで。大丈夫です」
このチームを支えるのは、村元の胆力だ。
順位は6位だったが、高橋はこう振り返った。
「ここがゴールじゃない。全日本選手権にピークをもっていきたいので。今ここで結果を求めていない」
今季の2人の最終形を楽しみに待ちたい。(朝日新聞スポーツ部・坂上武司)
※AERA 2022年11月7日号より抜粋