石田和雄が主宰する将棋教室には近隣の少年少女たちが多く集う。最近はコロナ禍の影響で大変だったというが、それも一服。「おかげで子どもたちも戻ってきてくれました」 (photo 写真部・高野楓菜)
石田和雄が主宰する将棋教室には近隣の少年少女たちが多く集う。最近はコロナ禍の影響で大変だったというが、それも一服。「おかげで子どもたちも戻ってきてくれました」 (photo 写真部・高野楓菜)

 藤井と佐々木の対局当日には、将棋会館(東京都渋谷区)だけではなく、柏将棋センターにも多くの報道陣が訪れた。結果は佐々木の完勝。師匠の石田にも大きくスポットライトが当たった。続いて藤井が公式戦2敗目を喫した相手は三枚堂達也(当時四段、現七段、28)。三枚堂は内藤國雄九段(82)の門下として棋士になったが、育ったのは柏将棋センターだった。

「最初にマスコミから天才少年と騒がれたのはたっちゃん(三枚堂)のほうでね。天狗になっちゃうといけないから、おじいちゃんがライバルを探してきた。それが1歳下でまだ幼稚園生だった勇気君でね。藤井君も早熟だけれど、たっちゃんと勇気君だって、それに勝るとも劣らない」

 石田は孫のような三枚堂と佐々木の成長を幼少時から見守り続けてきた。

 羽生善治九段(51)は現役時の石田について「本格的な筋のいい居飛車党」と語っている。その石田が本筋を教え込み、天性の素質を持つ弟子は驚異的な成長を遂げた。

(構成/ライター・松本博文) 

※12月25日発売のAERA2022年1月3-10日合併号では、石田和雄九段の生きがいや、弟子の佐々木勇気七段や高見泰地七段のその後についても触れています。

著者プロフィールを見る
松本博文

松本博文

フリーの将棋ライター。東京大学将棋部OB。主な著書に『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

松本博文の記事一覧はこちら