オミクロン株の感染拡大が再び急増するアメリカ・ニューヨーク州。新規感染者数が過去最多を上回った今、どのような状態なのか。AERA 2022年1月3日-1月10日合併号で、現地に在住するジャーナリストがリポートする。
【写真】テントとミニバンで提供している検査所は、どこも長蛇の列
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「私以外は、みんなオミクロンにかかっているのよ」
と、若い女性が冗談を言い、周囲にいた人が神経質に笑った。2021年12月17日、新型コロナウイルスの検査(ラピッドテスト)を受けようと約9時間、ニューヨーク市内のクリニック前に並んでいた時だ。
筆者は翌日、高齢の友人に会う予定があり、念のためにと軽い気持ちでクリニックに向かった。過去2年間で10回ほど無料で検査を受けた場所だ。2時間ほど待つのは覚悟していたが、2時間経っても列はほとんど進まない。
歩道に立っている間、自転車に乗った若い人が次々にブレーキをかけ、「何時間(並んでいるの)?」と聞いてくる。
「4時間、5時間の人もいる」「どこに行ったらラピッドテストを今日中に受けられるのか知ってる?」「明日早朝にここに来たら?」「エー、明日実家に帰る飛行機を予約しているのよ!」
■帰省前に検査所に殺到
後ろに並ぶ若い女性エンジニアは、同僚に陽性者が出たため、女性の上司から検査を受けるように言われた。4時間ほど並んだところで、その上司が車を横付けし、ビーチチェアと、軽食にペーストリー、スマートフォンのチャージャーなどを差し入れに来た。
クリスマスの1週間前で、帰省が始まる直前だったため、陰性を確認したい人が検査所に向かった。さらに、女性エンジニアのように職場で陽性の同僚が出た従業員も殺到。クリニックは急遽、濃厚接触の可能性が高い市民は、ラピッドテストの結果が出るまで30分ほど診療室に隔離することにした。このために、通常と異なり、検査プロセスの速度ががくんと落ちた。
12月17日のこの日、ニューヨーク州の新規感染者数は2万563人に達し、週の初めの2倍、21年1月中旬の過去最多を上回った。米疾病対策センターは20日、18日までの1週間は、米国内での新規感染者に占めるオミクロン株の割合が約73%になったとの推計を発表した。