東浩紀/批評家・作家。株式会社ゲンロン取締役
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 批評家の東浩紀さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、批評的視点からアプローチします。

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 東京都武蔵野市の住民投票条例案が12月21日の市議会本会議で否決された。市内に3カ月以上住む外国人に広く投票権を認める内容で、保守派より批判が強まっていた。

 この数週間、同条例案の是非をめぐってはさまざまな議論が交わされた。メディアやSNSでは国会議員や大学教授など多くの識者が意見を表明し、同市には左右双方の活動家が押し寄せた。ヘイトスピーチまがいの街頭演説も聞かれたという。

 筆者は外国人の自治参加に肯定的な考えをもっている。それゆえ否決を残念に思うが、それにしても不思議なのは議論の過熱ぶりだ。

 反対派は、同条例は外国人の市政乗っ取りを可能にし、国益を損なうものだと主張する。けれども住民投票への外国人参加を検討したのは武蔵野市が初めてではない。神奈川県逗子市と大阪府豊中市がすでに10年以上前に同じ内容の条例を定めている。より厳しい要件での参加を含めれば、じつに43の自治体が外国人の住民投票参加を認めている。それなのになぜ改めて騒ぎになったのか。

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東浩紀

東浩紀

東浩紀(あずま・ひろき)/1971年、東京都生まれ。批評家・作家。株式会社ゲンロン取締役。東京大学大学院博士課程修了。専門は現代思想、表象文化論、情報社会論。93年に批評家としてデビュー、東京工業大学特任教授、早稲田大学教授など歴任のうえ現職。著書に『動物化するポストモダン』『一般意志2・0』『観光客の哲学』など多数

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