
また月曜日がやってきた。小さな広告代理店で働く吉川(円井わん)は「この仕事が終わったら大手代理店に転職する」と野望を持ちつつ、日々仕事に追われている。そんなある日、吉川は2人の後輩から告げられる。「僕たち、タイムループしています!」──。連載「シネマ×SDGs」の24回目は、共感度100%&予測不能な新感覚ムービー『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』の竹林亮監督に話を聞いた。
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僕が所属する会社の上司(僕より3歳下です)は情熱的で、毎年正月に「今年もめちゃめちゃいいものを作るぞ!」とツイートをするんです。でも毎年同じ内容なので、脚本家の夏生さえりさんが「これ、タイムループに巻き込まれているんじゃない?」と(笑)。その一言が映画のはじまりです。

ヒロインの吉川は向上心や野心はあるけれど、自分のことしか考えていません。彼女がタイムループのなかで何に気づくのかがポイントです。僕自身CM業界で働き、20代は「これを納品したら自分のキャリアが変わるかも!」などと思いながら走ってきました。忙しくなると、周りの人としっかり向き合えてない自分に気づきつつも、止まれなかった。30代半ばになってドキュメンタリー映画「14歳の栞」で中学生と向き合ったり、国際協力の現場にいる方々と話す機会を持ったりしたことで、人生で大事に思うもののプライオリティーが変わった気がします。これまでの人生で「消費」してきたものとは別の大切さに気づけたというか。それを20代の吉川に気づかせてあげたかったのかもしれません。

コロナ禍で日本人の仕事への意識は確実に変わりました。それでも業界によってはいまだに「月曜の夕方にチェックしたいから月曜の朝までに送って。もしくは日曜の夜までに」と言われるようなこともあります(笑)。そういうときに「『MONDAYS』という映画があるんですけどね……」と、ジョークのように言ってもらえるとうれしいですね。がむしゃらに働く楽しさも理解できる。でもどんな立場の人も、もう少し余裕を持ったほうが健全だと感じます。成長の先には何があるのか。思い描いていたゴールと違うところにある価値のようなものを考えるきっかけになればとも思います。(取材/文・中村千晶)

※AERA 2022年10月24日号