時給1300円のパート社員より、自分のほうが給料が安い?
昼休みが終わり、Aがランチから戻ってくるとC所長が困った表情で言った。
「またパート社員が会社を辞めることになった。彼女が退職する10月末までに、また新しい人を探さなきゃ」
「代わりの人、B子さんみたいにすぐ見つかるんでしょうかね?」
Aは満腹で眠たい目をこすりながら受け答えをしていたが、C所長の次の一言で目が覚めた。
「いや、今度は難しいかもしれない。とりあえずB子さんと同じように時給1300円で求人募集してみるよ」
「1300円だって?」
Aは自分の給与明細書を見たときの総支給額を思い出し、急に疑問がわいた。
「俺って、そんなに給料もらってたっけ?」
そして電卓を取り出し計算を始めた。
「もし自分がパートの時給で1カ月間働いたとしたら、1300円×160時間で20万8000円。
今の自分の給料は通勤費を引くと16万円。何だ、パートの方が給料が高いじゃないか」
今までは残業代込みで給料をもらっていたので、まさか自分がパート社員より給料が安いとは思ってもみなかったA。衝撃はやがて怒りに変わった。
「毎月残業して仕事をがんばってきたし、パートに業務指導するのだって大変なのに……これまでの努力は無駄だった」
AはC所長に「自分の給料がパート社員より安いのはどうしてですか!」と詰め寄った。いつもは温厚なAが険しい顔つきになっているのを見たC所長はあわてた。
「そんなことを急に言われても……」
「総務職の給料計算をしているのはC所長ですよね? この事実を知っていたのに、知らないふりをしていたなんて許せません。さっきの話じゃないですけど、自分も10月いっぱいで会社辞めます。ああ、辞めますとも!」
パート社員はともかく、Aに退職されたら仕事が回らない。C所長は困り果ててしまった。