そのリベラル派のリーダーである岸田首相が、主体的な安全保障の構築に取り組まざるを得なくなった。
主体的な安全保障の構築とはいっても、それは日本を戦争のできる国にする、ということではない。
日本にとって、安全保障上の一番の問題は「台湾有事」である。米国の国防総省筋は、数年後に中国が台湾に武力攻撃をする、と予測している。
バイデン大統領は5月の日米首脳会談の際、もしも中国が台湾を攻撃したら、米国は台湾を守るために軍事介入する、と明言した。つまり、中国と戦う、ということだ。
安倍氏は、台湾有事は日本有事だ、と言った。台湾有事になれば、日本も戦わざるを得なくなる。
だが、日本はそのような対応策は何もできていない。だから、私は岸田政権の幹部たちに、台湾有事という事態を生じさせない方策を考えて、日本がそれをやってのけるべきだ、と強く申し入れた。
バイデン氏が大統領就任後、最初の首脳会談の相手に日本を選んだのは、米中対立について、日本に特別の期待をしていたからだ。
台湾有事という事態を生じさせないためには、どうすればよいのか。水面下で懸命に進められていることを期待する。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2022年10月28日号