高橋文哉(たかはし・ふみや、21)/(撮影/写真映像部・東川哲也)
高橋文哉(たかはし・ふみや、21)/(撮影/写真映像部・東川哲也)

「『最愛』を演出した塚原(あゆ子)監督や、『仮面ライダーゼロワン』の杉原(輝昭)監督にずっと言われていたのが、『相手の芝居を受けてくれ』ということ。お芝居は台本がある中でするけれども、人間は相手の言葉を聞かないと次の言葉が出てこないから、その枠を超えないとお芝居はリアルではなくなってしまうということを言われていました。『最愛』で吉高由里子さんと一緒にお芝居をして、その意味が分かってきました」

 吉高さんは本番以外の時間、ずっと高橋さんと雑談をしていたが、本番になると一変した。

「吉高さんに『家にある家具は何色が多いの?』と聞かれて、『えーっと、白ですかね』みたいな話をしていたのに、『よーい、はい!』の声で、ぶわっと朝宮梨央という僕のお姉ちゃんになる。その世界に本当に引きずり込まれました。『最愛』には、吉高さんのおかげで生まれたお芝居が間違いなくたくさんある。吉高さんだけでなく、松下洸平さん、井浦新さんなど、一緒にお芝居をする人によって、僕が演じていた『優』の役の立ち位置が変わりました。先輩のみなさんから受けたものを自分の中で消化し、優を演じられた実感があります」

■移動中にギターの練習

 作品ごとに新たな挑戦もある。「君の花になる」では、ギター、歌、ダンスに初挑戦した。1年以上練習をして、「8LOOM」のリーダー、佐神弾(さがみだん)役にのぞんだ。

「役者としてはリアルを届けたいと思っています。ギターも1日1時間ほど、車の移動中などに必ず弾くと決めました。最初は指が痛くて泣きながら弾いていたのが、指の皮が厚くなってだんだん痛くなくなってくる。そうすると楽しいんですよね。この瞬間が佐神弾にもあったはず。だからこそ、弾がギターを前にしたときの顔や、触った時にふとこぼれる笑みがあるなと思いながら演じました」

 前向きな言葉が多いが、当然、仕事がうまくいかず落ち込むこともある。それでも引きずらないように心がける。

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