後藤:僕は開いた最初にある一枚ですね。本人の顔だな、というか。自然な感じが。
木村:扉の直後にある、ページで言うと1ページ目ですよね。後藤さんに伺ったので私のお気に入りも言っておくと、正直全部好きですが、7ページです。
後藤:全身が写っていて、ちょっと膝が見えている。
木村:この世のものとは思えないスタイルですよね。さすがの世界を極めた人、というのを実感しました。
――「羽生さん独特の感情表現はありますか」という質問がきました。
後藤:原動力の話を聞いているなかで、自尊心や自己肯定感についての質問をしたんですね。僕は自尊心はあったほうがいいものだという前提で聞いたんです。でも、やっぱり質問者に合わせず自分の考えを言ってくれる人だから、羽生さんの言い回しとしては「自信は僕もないですよ」と。「でも、それより先になりたい自分があるかどうかじゃないか」と続けるんです。そこは独特ですよね。自信があるかないかではなく、本気でなりたい自分になろうとしているのか、という話をしていました。
羽生さんの練習仲間で、中村健人さんという引退した選手がいるんですが、その方に話を聞いたときも、「勝つんだ」「金メダルを取るんだ」というところが明確でした。そこが強いですね。オリンピック金メダルと言うと、誰もが目指せるものではありません。でも、それぞれの理想というのを常に明確に書き残したほうがいい、と話していました。
木村:今回、書籍のなかには、朝日新聞やAERAで報じてきた2007年から2022年までの羽生さんの記事を収録しています。もちろん全部ではありませんが、節目節目の記事は全部入れているので、小さいときからの思いの変遷とか、変わらないところとか、それもすごくわかる一冊です。私も記事を時系列で読んでいきながら、その時々の思いの揺らぎだったりとか、詰まっているなと思いました。記事をたどるだけでも、羽生さんの真髄がわかる一冊になっています。
木村:配信終了が近づいてきましたが、フィギュアスケートを報じる記者の方の集まりがあるとか、そんなことを知れたのもおもしろかったです。
後藤:今度座談会をしたいね、なんて話もしています。
木村:おもしろそう!
後藤:会社をまたいで、そういうのをやってもいいんじゃないかな、なんて。
木村:それもぜひ実現していただきたいです!
そうだ。今回は、全国の色んな書店さんで『羽生結弦 飛躍の原動力』を大きく展開していただいているんです。それぞれの書店さんが工夫してくださっていて、それを見ていても、羽生さんの人を惹きつける力を感じています。それぞれの書店さんが、この本を一冊でも多くの人に手にとっていただききたいと工夫されていて、本当にありがたいと思っています。
木村:さて後藤さん、長い時間にわたってありがとうございました。最後にメッセージ、いかがですか?
後藤:今回、40分という本当に貴重なインタビューの時間をいただきました。こんなに時間をいただいたのは、ソチオリンピック前以来です。ずっと聞きたかったことをじっくり聞かせていただいて、原動力やその原動力の原体験について、真剣に答えていただいて。とてもいいものができたと僕自身も思っています。ぜひ読んでいただければと思います。
木村:ありがとうございました!
(構成/編集部・福井しほ)
※AERAオンライン限定記事