木村:続いて、「取材をしているとファンになってしまわないですか? 自分なら仕事になりません」という質問です。これはいかがですか?
後藤:ファンになっている面もあるし、ならないように気をつけているというか、なるべく一線を引こう、というか。僕は、周りの記者にもよく言われるんですけど、冷めた人間で……。
木村:(笑)。そこは大事ですね、記者として。
後藤:あまり誰かにのめり込んだりはしないんです。もちろん、感動しないようにしていてもしてしまうし、特にフィギュアスケートは色んな場面でそうなるんですが、なるべく冷静でいるようにしています。そして、何を一番伝えなければいけないかいうことを客観的に考えるようにしています。
一方で、ファンになっているなと感じる部分もあって。みなさんご存知だと思いますが、スポーツ報知の高木さんとか、サンケイスポーツの田中さん、日刊スポーツだったら阿部さんとか。以前はよくみんなでご飯を食べに行っていたんですね。「仕事の話はやめよう! フィギュアの話はなし!」と飲んで食べてとしているのに、いつの間にか羽生さんの話になっている。やっぱり、気になるんですよ。「あのときのあれがさ……」とか。羽生さんという人は、やっぱりおもしろいんですよ。
木村:記者も虜になってしまう。
後藤:話題にせずにはいられないというか、放っておけないというか。一挙一動、言葉の一言ひとことが気になる。新聞的に言うと、「見出しが立つ」というか。やっぱり、ファンなんですよね。
木村:今回すごいなと思ったのが、羽生さんのファンの方が多いのはもちろん存じていましたが、取材をしている後藤さんや記者の方も注目されていることに驚きました。
後藤:緊張感がありますね。そういう記者の集まりに、「フィギュア研究会」という名前をつけているんです。
木村:へー!
後藤:なるべくフィギュアの話をしないようにしようとは言っているんですが(笑)
木村:私も今回取材や撮影に立ち会って、その一端を見たというか。惹きつけられてしまう存在感というのはわかりました。言い表す言葉を持ち合わせていないことがもどかしくなるくらいの存在です。
(構成/編集部・福井しほ)
※AERAオンライン限定記事
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