99年といえば、生産数はすでに減少に転じていたもののフロッピーディスクがまだまだ一般的だったころ。フロッピーの容量は最大で1.4メガバイト程度だ。当時は言葉の原義通り、メガのイメージは巨大だった。データセンター事業の老舗・さくらインターネットの研究機関「さくらインターネット研究所」の鷲北賢所長は言う。
「私が初めてハードディスクを買ったのは89年。当時は40メガバイトで約5万円でしたが、その容量を使い切る日が来るとは思いもよりませんでした。パソコンが一般的に広がり始めた95年ごろで、20万円程度のマシンに800メガ程度のハードディスクが搭載されていました。99年といえばすでにギガの時代に入っていましたが、それでもまだまだメガは大きな数字でした」
だが、それから二十余年を経てその常識は大きく変わった。コンピューターで使われるデータ容量は増え続け、今や1万円程度の一般的な外付けハードディスクでも4テラバイト程度の容量を持つものが多い。
「今はスマホで撮った写真1枚で数メガある。あらゆるデータがデジタルになり、高精度化していくことでデータ容量も大きくなってきました。半導体の世界では2年で性能が2倍になる『ムーアの法則』が知られていますが、データ容量もこのくらいのペースで大きくなっています」(鷲北さん)
■クエタでも足りない?
例えば、さくらインターネットが経済産業省事業として開発・運用する衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)」ではテラのさらに上、10ペタバイトレベルのデータを今現在保有している。
IT調査会社IDCの推計では、2020年時点の全世界のデジタルデータの総量は59ゼタバイトに上り、25年には175ゼタバイトにまで増えるという。このままいくと早晩、新たにつくられるロナやクエタでも足りなくなるかもしれない。
コンピューターの世界に限れば、メガが大きかった時代ははるか昔なのだ。最近では、大きさを表す表現としてメガではなくギガを用いるケースも増え始めた。「ギガ盛り」をうたった超大盛りメニューを提供する飲食店もある。巷間(こうかん)にあふれる「メガ語」も、いつかイメージに合わないと消えていく日が来るのだろうか。(編集部・川口穣)
※AERA 2022年10月10-17日合併号
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