illustration 土井ラブ平
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 巨大なものを指す言葉として慣れ親しまれてきた「メガ〇〇」。だが近い将来、誰もそんな言い方をしなくなる日が来るかもしれない。AERA 2022年10月10-17日合併号の記事を紹介する。

【図表】どこまで知ってる?ナノの下からテラの上まで…24種類の単位はこちら

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 メガバンク、メガベンチャーにメガシティー、そしてメガ盛りまで。メガは大きなさまを表現する接頭語として、日常のいたるところで使われている。ただ、先日知人の高校生からこんなことを言われ、はっとした。

「メガバンクって、なんだか変。私の持っているiPhoneの容量は128ギガバイト。父親にもらったずいぶん昔のUSBメモリーでさえ、32ギガあります。『メガ』って、全然大きくないですよね」

 メガの原義は「巨大な」の意で、メガバンクなどの用法もそれに則(のっと)っている。ただ、メガは10の6乗、すなわち100万を意味する言葉として広く知られており、さらに上の数字を表すギガやテラも日常的に使われることから、この高校生は違和感を持ったようだ。

■31年ぶりに拡張

 メガが10の6乗を意味することは、国際的な計量単位の約束事「国際単位系(SI)」で定められている。産業技術総合研究所計量標準総合センターの清水祐公子・光温度計測研究グループ長はこう説明する。

「メガやギガなどは『SI接頭語』と言われ、十進法の桁数を国際的に定めたものです。秒・メートル・アンペアなどSIで決められた単位と併せて使われます。SI接頭語を使えば1000000ヘルツのような大きな数字を1メガヘルツとすっきり言い表すことができますし、日本語では100万、英語では1ミリオンのように数字が揺れることなく、世界中どこでも1メガと表現できる。特に学術分野では欠かせないものです」

 なお、PCやスマホのデータ容量などで使われるバイトはSIで定められた単位ではない。また、計算機科学の世界では二進法が使われるため、1メガバイトは100万バイトではなく、2の20乗、すなわち104万8576バイトを表すこともある。二進法専用の接頭語が別に定められており本来はそちらを使うと混乱が少ないが、SI接頭語と同じ言葉を使うケースが一般に普及している。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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