加藤英明チーフプロデューサーが使っていた第73回NHK紅白歌合戦の台本(撮影/小暮誠)
加藤英明チーフプロデューサーが使っていた第73回NHK紅白歌合戦の台本(撮影/小暮誠)

──従来と変わらずテレビを通して視聴者を魅了したいという思いを強く持つ一方、今回は「LOVE & PEACE -みんなでシェア!-」とネット的なテーマを掲げた。

 NHKがとかく偉そうだと言われるなかで、「みんなで共有できる感覚で紅白を作りたい」とディレクターたちが言い出したのがきっかけです。4時間半見続けるだけでなく、1分くらいの切り出した動画をどんどん見てもらおうと考えました。それも紅白体験の一つですよね。

 それが視聴率につながったかどうかは、まったくわからなくて。むしろマイナスかもしれません(笑)。ただ、推計120万人がNHK+を通してウェブやアプリで紅白を見ていると聞いています。楽しみ方が多様化するなかで、僕ら自身が紅白をいろんな捉え方で考え、提案していかないといけない。そうしたことを去年は相当意識しました。

 サッカーワールドカップもそうですが、みんなで盛り上がれるコンテンツが若い世代を中心に共感を呼んでいます。共時的体験が求められているなら、紅白もそうでありたい。実は、去年の紅白は10代から30代の視聴率が軒並み伸びたんです。普段NHKをまったく見ない層でも、紅白だけは見るということは、やっぱり大みそかの夜は普段と違う体験がしたいということですよね。そこに紅白が寄り添えれば今後も必要とされていくと思います。

(構成/編集部・福井しほ)

AERA 2023年1月30日号

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福井しほ

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大阪生まれ、大阪育ち。

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