代表撮影
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自民党内では、以前から若者や女性から支持を得られていないという認識がありました。その層へリーチするためにネットの活用を進めていきました。ただ正直これがそこまで効果を発揮しているとは思っていません」

■いずれ薄まる安倍氏への共感

 西田氏が続ける。

「野党が弱すぎたことや、安倍政権下で新卒の就職状況が上向いたことなどが自民党の支持率の高さにつながったのでしょう。広報の効果もあるとは思いますが、影響の程度は小さい印象です」

 前出の山崎教授は言う。

「自民党を支持しているとは言っても、非常にあいまい。特定の理由があるわけではなく、彼らが強く持つ経済成長願望を実現してくれそうなのが自民党だからに過ぎません。それから、若者が権威に対して従順、というデータもあります。学生と話していると『長年、首相を務めているんだから、その人を批判するのはおかしい』と言うんです。国葬についても、『人が亡くなったんだし、悼むのは当たり前。だから賛成』という感じでした」

 多くの若者は安倍氏や自民党を熱狂的に支持しているわけではなさそうだ。安倍氏への共感も、国葬が終わればいずれ薄まっていくだろう。前出の五野井教授が言う。

「ロシアによるウクライナ侵攻などもあり、これからは経済の状況は悪くなっていくでしょう。その際に若者が自民党を支持し続けるかはわかりません。スペインやイタリアを見ると、極右や極左政党が票を伸ばしています。日本も同じ状況になる可能性がある。若者たちの一番の関心は経済ですから、彼らが『この党は私たちに何かしてくれる』と信じるに足り、政権運営能力がありそうな政党が出てきたとき、彼らはそちらに流れます」

 国葬を巡っては「国民を分断した」と分析する意見も多かった。だが、記者が普段つきあっている同世代にとっては、そこまで大きな関心事ではなかったように思う。むしろ賛否を争っている人々の姿のほうが、奇異に映ったのではないか。……いや、そもそも映ってすらいないのかもしれない。(本誌・唐澤俊介)

週刊朝日  2022年10月14・21日合併号

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唐澤俊介

唐澤俊介

1994年、群馬県生まれ。慶應義塾大学法学部卒。朝日新聞盛岡総局、「週刊朝日」を経て、「AERAdot.」編集部に。二児の父。仕事に育児にとせわしく過ごしています。政治、経済、IT(AIなど)、スポーツ、芸能など、雑多に取材しています。写真は妻が作ってくれたゴリラストラップ。

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