「(学生に)『菅さんの弔辞見た?』と質問したら、『見てないです』と言っていました。『国葬は自分にとって外野』と言う学生もいましたね」
もちろん国葬に関心を払い、献花に訪れた若者もいる。朝日新聞の世論調査(9月10、11日)では、18~29歳の回答者の58%が国葬に賛成した。ただ当日の様子を見る限り、実際は大して興味がない……。そんな若者たちも多かったのではないだろうか。
デモクラシー論などを研究する駒澤大学法学部の山崎望教授は、現時点での仮説としながら、次のように分析する。
「生まれたときから競争や自己責任を重視する新自由主義の時代を過ごしてきた若者は、社会よりも個人の目線を重視します。国全体に関わる国葬というイベントにどう応じてよいのかわからなかったのではないでしょうか。もう一つは、安倍政権が長期であったこともあり、ほかの政権と比較してどう位置づけるべきか、難しかったのかもしれません」
記者が成人してから大半の期間は、安倍氏が首相だった。学生時代から安倍氏の“業績”については、冷静に見ていたつもりだ。だが、政治について同級生と話した記憶はあまりない。そうした話題を交わすのは、決まって一回り、二回りも年上の人たちだった。
しかし、記者より若い人たちが安倍氏に“共感”する場面を目の当たりにすることがあった。
それは、安倍氏が襲撃された事件現場でのことだ。記者も事件が起きた直後、奈良に急行した。現場近くに設けられた献花台には、多くの若者たちの姿があった。
「おじいちゃんみたいで親しみがありました」と話す高校1年生や、「功績を残されて、尊敬している」と語る予備校生が目を潤ませて話してくれたことに、「これだけ若い人が熱烈に支持しているなら、自民党が与党なのも当然だ」と妙に納得したのを覚えている。
安倍政権といえばネットでの広報戦略に力を入れていた。安倍氏への共感はそこから生まれたのだろうか。
政治とインターネットの関係に詳しい東京工業大学の西田亮介准教授はこう語る。