■「ジャッジのほうが有利」
米国で取材するスポーツ紙記者は「ジャッジのほうが有利」と分析する。
「大谷の活躍は申し分ないが、ジャッジがこの成績でMVPを獲得できなかったらどうしようもないという論調が目立つ。エンゼルスがプレーオフ争いから早々と脱落し、ヤンキースがポストシーズンに進出を決めたこともジャッジに有利に働くでしょう。重圧がかかる試合のなかで結果を出し続けていると評価されているからです。また、米国人はホームランバッターが大好き。大谷がイチローをしのぐ人気である理由も、ヒットメーカーでなく長距離砲として成功しているから。本塁打の大記録を達成したジャッジのほうが注目度が高いのも事実です」
「ただ、MVPが決まりかというとそうではない。四球で歩かされるケースが増えて三冠王達成が最後まで分からない状況です。大谷とジャッジはどちらがすごいと優劣をつけられるものではない。投票する記者たちは最後まで迷うと思います」
大リーグのMVPは全米野球記者協会会員の30人が投票し、ア、ナ両リーグから各1人を選出する。投票は1位が14点、2位が9点、3位以下が1点ずつ下がって10位は1点となり、合計点で決める。
スポーツ紙デスクはこう話す。
「大谷が2年連続MVPに選出されなくてもその活躍が色あせることはない。『大谷はいつでもMVPを取れるから、今年はジャッジにあげよう』という声が米国のファンから上がっているが、こんな評価をされる選手はいない。米国でも歴史に名を刻むスーパースターとして誰もが認める存在になっています」
タイトルは選手にとって大きな勲章だが、大谷はその領域をはるかに超えた選手だ。(ライター・梅宮昌宗)
※AERA 2022年10月10-17日合併号より抜粋
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