■正式な勧告には至らず
「マスクは、新型コロナだけでなく、インフルエンザやRSVの感染も防ぐ」とニューヨーク市衛生局はマスク着用を勧めている。しかし、正式な「勧告」には至っていない。
昨年春ごろからマスクがない「ポスト・コロナ」の生活が人々の間で定着した。マスクの復活はクリスマス前の一時期だけで、休暇明けの現在はまたもマスクが姿を消している。
一方、感染数が落ち着いていても、新型コロナの傷痕は根深い。特に医療機関では3年間に5度の新型コロナの波と、今年はインフルエンザとRSVが加わり、現場が疲弊しきっている。
1月9日にはニューヨークの二つの大病院で、看護師計7千人以上が賃上げと職員数の増加を要求してストライキに突入した。新型コロナの治療でトリアージまで経験し、精神的に追い詰められ退職した看護師も多い。人手不足もあって、医療体制の逼迫(ひっぱく)が深刻化しているという。
また、ニューヨークのグランド・セントラル駅地下にあるフードモールの半分ほどの店舗が閉店したままだ。観光客は休暇中に戻ってきたものの、リモートワークが一部で定着し、ビジネスランチの需要がコロナ禍前の水準に戻らないためだ。当然、同市経済にも影響は及んでいる。
米国の新規感染者数は1月16日、5万9121人(1週間平均)で14日前との比較では横ばい状態。しかし、死亡者は562人(同)で同78%増と急増している。米国での感染者数は過去3年間で計1億人、死亡者数は111万人に及ぶ。
(ジャーナリスト・津山恵子)(ニューヨーク)
※AERA 2023年1月30日号