プロのスコアラーが見ているのは打席での姿だけではない。
「ネクストバッターサークルでの様子を見ていると、ブラスバンドの音楽を聞きながらリズムを取っていました。リズム感のよさは打撃でのタイミングの良さにつながります。だから軽く振っているように見えても、打球を遠くまで飛ばせる」
山田と同様に170センチ台と小柄ながら、身体能力が高く、ハンディーにはならなそうだ。
「ゴムまりのようなバネがあり、ひざの使い方も柔らかい。バットを鞭のように振る姿は西武の山川穂高選手を彷彿とさせます。『浅野がいるから球場に見に行きたい』と思わせる選手になってほしい」
他では、大阪桐蔭の川原嗣貴、富島(宮崎)の日高暖己の両大型右腕。ともにじっくり育てたい素材型のようだ。
「二人とも快速球を投げる本格派ながら、まだまだ粗削り。川原君は球質がまだ軽く、下半身の強さが不足していて制球も高低にばらつく。日高君は球の出所が見やすく、変化球の曲がりが早い投球フォームに改善の余地があります。ただ、これらは裏を返せば伸びしろが非常にあるということ。大学進学も一つの手ですが、上位指名ではなくとも十分、指名の可能性はあります。手足が長い大型投手を育てるのがうまい広島に入団となれば化けるかもしれません」
初の決勝進出に大きく貢献した下関国際(山口)の仲井慎は面白い存在。本職は遊撃手ながら、全5試合に救援登板。気迫あふれる投球で魅了した。
「左足を上げてから着くまでが早く、野手独特の投げ方。力任せな感じで投球的には“雑”な印象ですが、スライダーの切れが非常によく、縦の変化球があれば将来的には面白い。打撃はプロ相手にはまだまだ厳しそうだが、遊撃手ということでフィジカルが強い。投手がだめでも野手転向と“つぶし”がきくのも強み」
各球団がしのぎを削り、あっと驚く指名もある。甲子園を沸かせたあの球児はどこへ行くのか。今年のドラフト会議は10月20日に開かれる。
本誌・秦正理
※週刊朝日オンライン限定記事