AERA2022年9月26日号より
AERA2022年9月26日号より

■90年代以降は失敗続く、世論調査で反対が過半数

 日本でも原発なしで50年カーボンニュートラルの経済合理的な達成が可能だ、とする研究は増えている。再生可能エネルギーの導入拡大や、それを生かす送電網の充実がカギとなる。岸田首相はGX実行会議で、そちらの選択についても「政治の決断が必要な項目」と述べているが、どちらに注力すべきかは、もう自明だろう。

 原発は、高度成長期の60年代に初めて登場した時も、電力需給の逼迫を背景に、最新の技術と経済性、安全性を売り文句にしていた。ところが90年代以降、大きな失敗が続く。「使った燃料以上の燃料を生み出す、夢の原子炉」とうたわれた高速増殖炉「もんじゅ」は95年にナトリウム漏れの火災を起こし、1兆円以上かけたのに稼働日数250日で廃炉になった。

 核燃料サイクルの要となる再処理工場(青森県六ケ所村)の完成時期は今月7日に26回目の延期が報告された。当初97年完成予定だったが、25年遅れても完成のめどはたっていない。総事業費は約14兆円とされている。

 そして福島第一原発での事故。後始末に少なくとも22兆円と見積もられ、今も3万人以上が避難を続ける。

 原子力市民委員会の座長を務める大島堅一・龍谷大学教授は、原発の「無責任の構造」をこう説明している。

「野心的で過大な目標をたてる」

「それが失敗しても、原因究明しない、順調であるかのようにふるまう」

「根本的な解決、方針転換をしない、先送り」

「意思決定に関与した当事者の責任を問わない」

「国が原子力事業者を手厚く保護」

 この繰り返しで原発は推進され、今回も同じ構造だと指摘する。

 8月27、28日に朝日新聞が実施した世論調査では、原発の新増設について「賛成」34%、「反対」58%だった。朝日新聞によれば、首相は想像以上の世論の反発に「異様だな」と漏らしたという。原発をめぐる無責任の構造を世論が見透かし始めていることに、まだ気づいていないのだろうか。(ジャーナリスト・添田孝史)

AERA 2022年9月26日号より抜粋

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