
江利川:先生から「自分でやってみる?」と聞くのですか。
星野:外来受診時に「できそうだから、やってみたら?」って促すことが多いですね。一番早く入れ替えられるようになった子は、8歳だったかなぁ。
江利川:以前、先生は勉強会で「医療はハードルが高いと思われている」とおっしゃっていました。
星野:医療者側が歩み寄らない限りは、やっぱり医療のハードルは高いままでしょうね。高い必要もあるとは思うのですが、医療的ケア児の支援に関して言うと、行われている場所が「生活圏」です。病院における治療はもちろん医療中心に行われる必要がありますが、生活の中では医療は中心的な存在ではないので、そうした視点を持って、生活をサポートする側に回る必要があるだろうと思っています。
江利川:学校では医療的ケアの導入もハードルが高いですね。
星野:学校から呼ばれて行くと、「教えてください」と言われることが多いのですが、「いやいや、学校生活のことを私は何も知りません」と思うのです。生活圏でのことについては、「医療者が来たら教えてあげなきゃ」くらいに思ってもらえると助かります。教えてもらって初めて、「それなら、病院とはやり方が違うけれど、こうしたらどうでしょう」と医療をもとにしたアイデアが出てきます。
■かがやきに寄り添う
江利川:障害のあるお子さんのご家族に変化は感じますか。
星野:受診の際に、お父さんが同行する割合が増えている気がします。10年前はほとんどいませんでしたが、今は3人に1人くらいは一緒に来てくださっている印象です。
江利川:増えた背景には、どんなことがあるのですか。
星野:新生児領域では20年ほど前から「ファミリーセンタード・ケア」という、家族を中心に置いた医療が言われるようになり、NICUが変わってきたことは影響していると思います。
江利川:家族支援で大切なことはどんなことだと思われますか。
星野:対象が子どもである以上は、家族がいないと成り立たないので、「家族支援」は大切だと思います。ただ、「家族支援は大切だけれど、子どもと家族は別の個人であること」を忘れない方が良いと思っています。それは成人移行期支援にもつながります。
大友:障害のあるお子さんのご家族の障害受容は、行きつ戻りつしますから、中長期的に支援をすることが必要となります。その都度、お子さんの育ちや個性等、キラッと光る部分をご家族等と共有しながら受容に寄り添っていくことが大事だと思います。一人ひとりのお子さんの育ちに寄り添うことにより、われわれ支援者も育てられ、つながる支援者同士の学び合いにもなります。大切なのは、チャイルドファースト。点を線に、線を面にするネットワークにより、一人ひとりのお子さんらしさ、ご家族らしさを大切に“地域の一員としての暮らし”をサポートいたします。
(構成/医療ソーシャルワーカー・江利川ちひろ)
※AERA 2022年9月19日号より抜粋