『あくてえ』(山下紘加 河出書房新社)
『あくてえ』(山下紘加 河出書房新社)

【山梨】第167回芥川賞ノミネート 気鋭作家が描く女性3世代家族
『あくてえ』(山下紘加 河出書房新社)1650円
柳正堂書店甲府昭和イトーヨーカドー店(昭和町) 青柳力店長

「あくてえ」とは「悪口」や「悪態」の意味を指す甲州弁。19歳の主人公・ゆめの夢は作家になること。山梨から来た祖母と母との3人暮らしだ。

 不倫の末、家を出ていった元夫の母親を献身的に介護する母。そんなことはおかまいなしに、日々衰えていく身体に抗うように甲州弁でまくしたてて自己主張する祖母……。

 一向に出口がみえない生活の中で苛立ちばかりが募る、ゆめの立場が身につまされる。

 全編を覆いつくす、永遠に沸点に達しないぬるま湯のような感情が「あくてえ」とともに読者の心に迫ってくる作品だ。

【長野】日中戦争下にあった旧満州 国策で送り出された青少年の運命
『満蒙開拓 青少年義勇軍物語 「鍬の戦士」の素顔』(伊藤純郎 信濃毎日新聞社)1430円

今井書店(茅野市) 高村志保さん

 世界は未知の過去から成り立っている。

 満州、という地名は中国にはない。その地を中国では現在、東北という。

 この本は国内の農村救済と満州国の治安維持という目的の下、満州に人々を入植させた移民政策の記録である。

 希望に満ち満ちた瞳がそこにはあった。その瞳のきらめきは今もこの国にあるのか……。

 この本を読んで、女性の存在なくしては語れない満蒙開拓を私たちは心に刻み、どんな時代であろうと人は温もりが必要なのだと再確認したい。

【岐阜】カナダ人カメラマンが活写した美しくも慎ましい日本の原風景
『郡上八幡百景 Gujo Hachiman‐Through a Canadian Photographer’s Lens‐』(ブレント・ボーグンドヴァーグ 岐阜新聞社)2530円

ひらく本屋 東文堂本店(多治見市) 木野村匡社長

「この本は郡上八幡とそこに住む素晴らしい人々への僕からのラブレターさ!」。京都でもない、高山でもない、“清流と踊りの城下町”岐阜県郡上八幡に惚れ込んだカナダ人写真家、ブレントさん。

 文化の違いはあっても、美しい風景は変わらない。初来日から22年にわたり、カナダ・トロントの自宅から訪れること40回以上。四季折々、朝な夕なに、街の隅々まで歩き回ってレンズを向けた2万枚にも及ぶ作品は、観光協会の公式パンフレットやHPにもアップされており、それらの中から厳選した写真集

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