
これらのスパイスを玉ねぎ、トマト、にんにく、しょうがと一緒に炒めると、カレーの素「グレイビー」ができる。これはルーのようなもので、小分けにして保存しておくと便利。肉や野菜などの具材を炒める時にグレイビーを加え、ココナツミルクやヨーグルト、水や牛乳などの水分を加えればスパイスカレーの完成だ。

「野菜や豆類、肉や魚などの食材の組み合わせでいろんなカレーが楽しめるのは、具材で味わいが異なる味噌汁に似ています。ただし、具材を入れすぎないのがポイント。食材は2~3種類くらいがおすすめです」
印度カリー子さんに肉、魚、野菜を使ったレシピを1種類ずつ教えてもらった。

「よりスパイスの香りを楽しみたいなら、ホールスパイス(粉砕していない原形のもの)をフライパンで軽く炒めて香りを立たせてから、具材とグレイビーを入れて炒めてみて」とアドバイス。印度カリー子さんはスパイスカレーをほぼ毎日食べているうちに1年半で7キロやせたという。
「スパイスの香りと刺激で満足感があり、食材もヘルシー。市販のルーを使ったカレーは小麦粉が入っています。小麦粉は油を乳化させるので、とろみやコクが出ますが、胃に重く感じられることもあります。スパイスカレーなら軽い口当たりで食べやすく、シニア世代にもおすすめです」

神奈川歯科大学大学院の川嶋朗医師は、スパイスカレーは体を温めて冷えにくい体を作り、認知症予防にも効果的と話す。
「ターメリックに含まれるクルクミンという成分は、アルツハイマー病を予防する効果があります。インドでは肥満が非常に少なく、アルツハイマー病にかかる人も人口比で極端に少ない。クルクミンはアルツハイマー病の進行を抑えるほかに、抗酸化作用、抗炎症力、胆汁の分泌促進などの効果もあります」
スパイスには漢方で薬として扱われているものもある。川嶋医師が言う。
「スパイスカレーはインド版薬膳料理のようなもの。クミンは消化促進効果や抗がん作用、コリアンダーは解熱効果があることから夏バテ防止にも役立ちます。にんにくやしょうが、レッドチリペッパーは体を温める効果があり、体の深部体温を上げてくれます。さらに野菜やたんぱく質もバランスよく摂取できます。カレーが健康にいい理由はたくさんあるのです」
実は味噌汁感覚で手軽に作れるスパイスカレー。記者も取材がきっかけでグレイビーを冷凍庫に常備するようになった。本格的な味が楽しめるので、ぜひ挑戦してみて。(ライター・吉川明子)
※週刊朝日 2022年9月9日号