成田:あともう一つよかったと思うのは、東大は日本で頭を使うのが一番得意な人が大集結する。あれは結構珍しい現象で、日本ぐらいの規模の国で大学のヒエラルキーがこれほどはっきりしてる国ってないと思う。
大宮:なるほど。
成田:アメリカだってトップ大学が数十校あって、どこが上とか言いにくい。イギリスもオックスフォードとケンブリッジがある。1億人以上の人がいる中で勉強ができる人がみんな東大に行くみたいな国はあんまりないので、若い頭脳の集積度合いで言うと、すごいと思いますね。
大宮:今年、東大の前で受験生の刺傷事件がありましたよね。なぜそういうことが起きちゃうんだろう。
成田:この国で東大コンプレックスがこれだけ大きいのは、多分、難易度が絶妙だからなんじゃないですか。
大宮:難しすぎないということ?
成田:はい。東大は1学年3千人くらい入るじゃないですか。今の子どもの出生数は年間80万人ぐらいですか。すると、0.3%くらい。だから百人に1人は入れないけど、千人に1人は入れる感じ。ギリギリ届くようで届かないみたいな範囲。
大宮:もっと難しくしたら、あきらめがつくってこと?
成田:ノーベル賞が取れなかったとコンプレックス抱いてる人って少ない。だけど東大に入れなかったコンプレックスを抱いてる人は結構いる。東大コンプレックスをなくす過激な解決策は、東大の定員を30分の1にして超難しくすることかも。
※AERA 2022年9月5日号