IOCのバッハ会長
IOCのバッハ会長

■税金使わぬ計画 実現できるのか

 気になる予算について大会概要案を見てみると、当初案で3100億~3700億円と試算していた開催経費を最大900億円削減し、2800億~3千億円とするという。昨年の東京五輪で開催経費肥大化に批判が高まったことを踏まえ、「原則、税金は投入しない計画。13ある競技会場は既存施設の改修が中心で新設は予定していない」(勝木氏)。

 一方、この計画にかみついたのが招致反対派だ。来春の札幌市長選に五輪招致反対を旗印に出馬を表明した元札幌市市民文化局長の高野馨氏はこう批判する。

「東京五輪の予算規模が当初の計画から徐々に肥大化していったように、計画どおりに収まるはずがない。毎年のように財源不足なのに、借金してまで五輪なんてできません。今回の元理事の逮捕などのスキャンダルで五輪の利権、金権体質が明らかになってきているにもかかわらず札幌が招致活動を続けると、都市ブランドとしてのイメージが傷つきます。市民からも賛成の声を聞いたことがない」

 藤川雅司道議(民主・道民連合)は、市民の賛意を得るためには知恵と説明が必要だと説く。

「スポーツの祭典に頭から反対する人はあまりいないと思いますが、今回の大会概要はぱっとしない。何のためにやるのか、これからの札幌の都市整備をどうしていくか、全く見えない。例えば観客の輸送手段を電気自動車にするとか、選手村をすべて木造にして大会後は市営住宅とすることでCO2削減につなげるとか、理念をもっと打ち出して、しっかり説明しないといけない。元理事の逮捕という新たな事態が起きたのだから、秋元克広札幌市長はもう一度、市民の意向調査をすべきです」

 混迷を極める招致の行方。カギを握りそうなのは皮肉にも「ぼったくり男爵」と揶揄されるIOCのバッハ会長の存在だ。JOCの関係者が語る。

「昨年の東京五輪の開催中から、バッハ会長周辺から『札幌支持』『札幌内々定』との観測が流れるなど、『札幌一択』の雰囲気が醸成されつつあった。バッハ会長はコロナ禍にもかかわらず東京五輪を強行開催してくれたことで、日本はリクエストに何でも応えてくれると思っている。だから札幌開催をプッシュしてくれるだろう。でも、決まれば、あれこれと注文をつけてくるに違いない」

 五輪欲しさに2度もぼったくられるのだけは避けたいところだ。(本誌・村上新太郎)

週刊朝日  2022年9月2日号

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