現役世代の読者も中高年にさしかかれば、老後の不安がよぎる。少子高齢化が進み、経済の低成長が続けば年金は、老後の資金はどうなるのか。AERA 2022年8月29日号の記事から紹介する。
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ニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫上席研究員に、平均年収別(500万円と700万円)、世代別の年金受給額の試算を依頼した(2022年4月の物価を元に算定)。
厚生労働省が実施した21年の賃金構造基本統計調査によると、従業員1千人以上の企業に勤める大卒の20~50代の平均年収は692万円。これを100万円単位で丸めて平均年収700万円とした場合、今の65歳は単身で18万4千円だが、50歳は15万9千~17万4千円、40歳は14万5千~16万7千円、30歳は12万~16万7千円に目減りすると見込まれる。
厚労省が公表している標準的な年金額の世帯の元の年収(526万8千円)に近い平均年収500万円の人は各世代でそれぞれ数万円少なくなる。
共働き世帯はいずれもこの倍額。これらは基礎年金(1階部分)と厚生年金(2階部分)を合わせた額だ。会社員経験がなく、自営業やフリーランスの人は基礎年金のみ。この場合、40年間加入しても受給額は6万5千円前後。しかも今後、基礎年金は2~3割目減りする可能性があるという。
■基礎年金が目減り
公的年金は、月々の保険料が一定以上に上がらないようにする代わり、物価が上昇してもその上昇率ほどには給付が増えないようにして年金額を抑える仕組み(マクロ経済スライド)が導入されている。この仕組みでは、自営業者らが加入する国民年金を含むすべての年金受給者が受け取れる基礎年金と、会社員らが加入する厚生年金の報酬比例部分で別々に調整する。代表的な経済ケースを元にした現時点の見通しでは、報酬比例部分は25年度に終わるが、基礎年金は46年度まで続き、その分だけ給付水準が下がる。
中嶋さんの試算では、給付水準は19年度と比べて、厚生年金が0~3%、基礎年金が22~28%、それぞれ段階的に目減りする。経済が低迷した場合や出生率が低下した場合、給付調整が長引き、厚生年金が4~16%、基礎年金が32~49%まで目減りする。中嶋さんは言う。
「今後の給付水準は、厚生年金よりも基礎年金で目減りが大きくなる見込みです。このままだと、基礎年金しか受け取れない自営業者らだけでなく、現役時代の給料が少ない会社員も不利な目に遭うことになります」