※写真はイメージ(gettyimages)
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「怖い」「恐ろしい」──。ウクライナ侵攻以降、暗いイメージで捉えられがちなロシア。 だがロシアにも、普通の人々の暮らしがある。本当のロシアとはどのような国なのか。AERA 2022年8月15-22日合併号から、近くて遠い国、ロシアを知ることができるマンガ3作品を紹介する。

【写真】吉村和真さんおすすめのマンガ3作品はこちら

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 マンガ好きの麻生太郎副総理(当時)が昨年9月、記者団に「読んでる人、一人もいないの?」と聞いたことで一躍有名になったマンガがある。『紛争でしたら八田まで』。世界を股にかける地政学リスクコンサルタントの八田百合が主人公で、既刊9巻のうち2巻と3巻で、ロシアとウクライナによる紛争以前の緊張状態について描かれる。

「ロシアには荘厳な建物があり、バレエや芸術も盛ん。王政や戦争が長く続いたという点でも、しばしばマンガの舞台となっています」

 と話すのは、京都精華大学マンガ学部教授の吉村和真さん(思想史・マンガ研究)。そんな吉村さんに、今ロシアを知るためのマンガ3作品を聞いた。

【風雲児たち】みなもと太郎著/リイド社/昨年亡くなった漫画家が40年以上にわたり描き続けた。鎖国時代の日本に生きた風雲児たちを、ギャグマンガのタッチで生き生きと描いた
【風雲児たち】みなもと太郎著/リイド社/昨年亡くなった漫画家が40年以上にわたり描き続けた。鎖国時代の日本に生きた風雲児たちを、ギャグマンガのタッチで生き生きと描いた

 まず挙げたのは『風雲児たち』。

「本作は群像劇ですが、その中に江戸時代の船頭で遭難してロシアに流れ着いた大黒屋光太夫たちの話があります。一般人が外国へ行くことはあり得なかった時代に、ロシアの皇帝エカテリーナ2世にも謁見。思想や文化が全く異なる日本人とロシア人がまじまじと向かいあい、少しずつ互いを知っていくリアリティーが絶妙です」

 光太夫が登場するのは、ワイド版全20巻のうち8巻から12巻。当時、ロシアは帝政を敷いていたが、日本とロシアの社会の違いもわかる。そして本作は「歴史大河ギャグマンガ」としても知られていて、楽しみながら深く学べるという。

「教科書とは違った、マンガとしての面白さも満載です」

■イチ主婦の目線から

 いま、「ロシア」と聞くと、ウクライナに侵略を続ける「怖い国」とか「不気味な国」というイメージを抱く人が少なくない。だが、ロシア国内にも普通の人たちの暮らしがある。

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