「玉ねぎやジャガイモが高騰したとき、実はうちは、比較的値段が上がらなくて、地域のお客様に喜ばれましたよ」

 直売のメリットは他にもある。東京から遠隔地の野菜を仕入れる場合、畑で収穫してスーパーの店頭に並ぶまでに4~5日要することもある。その点、地元野菜は収穫から店頭に並ぶまでの日数が短く、「日持ちがいいと好評」(かしわで店長)。毎日の料理の献立を考える上で助かる存在になりそうだ。

 ……と、そんな取材を続けるうちに飛び込んできたのが、「レタスが値下がりしている」という情報。7月中旬、豊作の影響でレタスの価格が下落。一時は出荷価格が1玉20円前後、店頭価格も50円以下で販売される店が続出したのだ。

 野菜卸売業者に聞くと、こうした価格の下落や上昇は毎年のように起きているが、あくまで一時的なものであることが多く、長期で安値を期待するのは難しいという。

「野菜作りは毎年同じようにやっても、結果は同じにならない。相場はまさにお天気次第で、1~2週間後はもうわからない。途中まで順調に生育できていても、天候の急変化や台風ひとつで不作になることもあります」

 また、極端な値下がりも期待できないという。

「農家は人件費や運送費、梱包費などをかけて出荷しても価格に転嫁できないなら、むしろ出荷しないほうがマシという判断に至ることもある。あるいは農協が相場の適正価格を維持しようと出荷制限をかけることもあります」(野菜卸売業者)

 まるで株トレーダーが値動きを見るがごとし。一般消費者がタイミング良く安値をつかむのは難しい。節約の良い一手はないのか。前出の秋葉社長は「『必ず今日安い』というものは存在しない」と言い切り、こう語る。

「大変ですが、献立は決めないでスーパーに行くのも一つの手。来てから、その日の特売品を見て献立を決める。これは絶対に節約につながります。そこにお米を取り入れる。経済的にもいいし、日本の農業を助けることにもつながります」

 ピンチはチャンス、なのかもしれない。(桜井恒二)

週刊朝日  2022年8月19・26日合併号