林:それがいま人気者で、誰に対してもやさしいし、私も見習わなきゃと思いますよ。

和田:そんなことはないですが、高齢者をたくさん診ているうちに。偉い地位を得てもそれはいつまでも続かない。だけど、林さんとこうやって仲良くしてれば、お互いがかなりヨボヨボになっても仲良くできるような気がするんです。そっちのほうがよっぽど財産だと思うんですね。

林:いいことおっしゃるじゃないですか。

和田:それと、年とったときにお金を残すよりも、思い出を残したほうがいいと思うので、そっちのほうにお金を使いたいんです。「映画をつくりたい」というのは、そういうことなんです。

林:和田先生には、映画監督としての顔もありますもんね。それから、「受験の神様」とも言われて、進学や受験に関する本でもベストセラーがありますよね。

和田:これが悲しいことに、去年おととし、僕、すごく生活が苦しかったんですよ。受験産業の売り上げが激減しちゃって。映画に投資したお金もまったく回収できなかったですし。通信教育だから、コロナで生徒が増えるはずだと思ったら、財布のヒモが固くなっちゃったんです。しかも、あまり本も売れなくて。

林:先生、あのころ暗かったです。「人生で最大の貧乏だ」とおっしゃるので、私がごちそうして差し上げました(笑)。

和田:日本人は昔と比べものにならないぐらい上昇志向が落ちてると思うんですね。「ドラゴン桜」(2021年)ってドラマがありましたよね。

林:はい、ありました。元暴走族の弁護士が、偏差値の低い高校生を東大に合格させるという。

和田:05年に初めてドラマ化されて、あのとき番組関連の参考書がものすごく売れたんですけど、去年ドラマ化された「ドラゴン桜」では、東大受験ブームがまったく起きなかったんです。視聴率はそんなに変わらないのに。上昇志向とか、自分に対する夢とかが、この20年ぐらいでなくなってしまって、僕の通信教育を受けたら田舎の学校からでも東大医学部に行けるとか、実際受からせてるんだけど、来ないんですよ。

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