林:私が『野心のすすめ』を書いたのが9年前で、50万部売れましたけど、あれが最後かな、上昇志向の風潮の。いま出したらぜんぜん売れないかもしれない。

和田:僕は、この国の子どもに「もう少し危機感を持ってほしい」と思ってるんですが、お年寄りに元気になってもらうしかなくて。

林:ほんとですね。先生が別の本で書いてましたけど、団塊の世代はすごく頭がいいし、やる気もあるし、大学進学率が10%台のときに大学に行ってた人の意欲とか勝ち抜いてきた能力って、すごいですよね。

和田:すごいと思いますよ。ロナルド・ドーアさんという日本研究の学者が書いておられたんだけど、「昔は東大に行けるだけの学力がある人が、試験の日、コンディションが悪くて落ちてしまうと、家が貧乏で浪人が許されずに会社に就職する。そして労働組合に入っていくから、会社の経営陣と知的レベルが変わらなかった。ところがいまは、会社の経営者たちは6年一貫教育の学校を出て東大なりそれなりのところに入っているが、若い社員は勉強しなくても大学に行けるから、経営者にまったく歯が立たない」というんです。

林:おー、なるほど。

和田:僕もこういうことが格差社会とか階級社会のもとになっていると思うんです。

林:いま、お金がある人だけの進学の抜け道があるじゃないですか。国内どころか海外の付属校、AO、帰国子女枠とか。ああいうの、フェアじゃないと思いますよ。

和田:ほとんど全員が受験競争に参加していた時代のほうがよっぽどマシだと思うんです。やっぱりガツガツしてることが大事なんじゃないですか。僕は17歳のときに映画監督になりたいと思って、いまでもガツガツしてますからね。

林:先生、偉いと思いますよ。初めて撮った「受験のシンデレラ」は何年前でしたっけ?

和田:07年なので、15年前です。

林:私も女優として参加させていただきましたけど(笑)、外国で賞をおとりになって(モナコ国際映画祭最優秀作品賞、最優秀脚本賞など)、そのあともコツコツためた自分のお金を映画製作に差し出したり、スポンサーを見つけて、その人に裏切られたり、そんなことを繰り返しながら映画を撮り続けてらっしゃるんですよね。

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