渡辺明王将に藤井聡太が挑む、王将戦七番勝負が1月9日に始まる。三冠と四冠が対決するのは史上初で、藤井にとっては史上最年少五冠をかけた戦いでもある。下馬評は藤井ノリの声が圧倒的だが、直近の対戦では渡辺王将が勝利している。AERA 2022年1月3日-1月10日合併号で、この歴史的一戦を取り上げた。
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藤井と渡辺の直近の対戦となった21年9月の銀河戦準決勝。渡辺は不利な後手番をもって会心の勝利をあげている。今年度、藤井は先手番で26勝2敗という信じられないような成績を残しているが、そのうちの1敗はこのとき渡辺に喫したものだ。
■AI研究では追いつく
竜王戦七番勝負で4連勝ストレート勝ちした豊島将之現九段には、将棋日本シリーズJTプロ公式戦決勝で敗れた。藤井が棋戦決勝で敗れたのは棋士になって初めてのことだ。
王将リーグ最終局では永瀬拓矢王座(29)に敗れている。
これまで「4強」と呼ばれた藤井、渡辺、永瀬、豊島の中でも藤井は「超1強」として抜け出しつつある。しかしそれでもまだ、他の3者が完全に置いていかれたわけではない。
現在の将棋界はコンピューター将棋ソフト(AI)を用いての研究がスタンダードとなった。棋士の実力のうちAI研究が占める割合は一部に過ぎないが、重要な要素であることに間違いはない。藤井は自作でハイスペックのマシンを組み立て、序盤の大局観のよさに特長があるディープラーニング(DL)系のソフトをいち早く導入するなどして、この分野でも他の棋士に先行するところはあった。
一方で渡辺は21年夏、AI開発者に相談し、130万円ほどするマシンを購入した。1秒間に読む手数は300万手から8千万手へと増え、研究効率も大幅アップ。さらにはDL系ソフトも導入し、その点でも藤井に追いついている。
「渡辺王将はとても作戦巧者という印象があります」
挑戦を決めた際、藤井は記者会見でそう述べている。希代の戦略家である渡辺が、どのような序盤作戦をぶつけてくるかも楽しみなところだ。