世界で大流行するオミクロン株だが、動物実験から肺では増殖しにくく、重い肺炎を起こしにくいとわかってきた。従来のデルタ株とどう違うのか。 AERA 2022年1月24日号から。
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新規感染者数が2日で2倍になるような勢いで感染が拡大している新型コロナウイルスのオミクロン株により、世界各地で1日の新規感染者数の過去最高記録が更新され続けている。
国内でもかつてない勢いで第6波が到来している。東京都では1月13日の新規感染者数が3124人になり、昨年9月初旬以来、約4カ月ぶりに3千人を超えた。この日までの都内の1週間の平均感染者数は約1500人で、前の週の平均の約7倍になった。
ただし、オミクロン株への置き換わりが早く進んだ英国の健康安全保障庁の2021年末の報告では、オミクロン株の前に流行していたデルタ株に比べ、オミクロン株への感染では病院を受診するリスクは半分程度、入院するリスクは3分の1程度だという。
現時点では、入院リスクなどが低い理由はまだわからない。ワクチン接種や感染によって新型コロナウイルスに対する一定の免疫を持つ人が増えたためだという可能性もあるし、オミクロン株への感染者がもともと重症化しにくい若い世代に多いからなのかもしれない。また、オミクロン株のウイルスそのものの病原性が低く、重い症状を起こしにくいのかもしれない。
国内外の研究チームが昨年12月以降、ネット上に次々と発表している、第三者の専門家による評価が終わる前の論文によると、少なくとも動物実験では、オミクロン株の病原性はデルタ株などの従来株よりも低いとわかってきた。
■肺で濃度10分の1以下
米国立アレルギー・感染症研究所を中心にした新型コロナウイルスの進化を評価するコンソーシアムは昨年末、動物実験でオミクロン株の病原性を調べた結果を発表した。このコンソーシアムには東京大学医科学研究所や米ワシントン大学の研究チームなど国内外の複数の大学や研究所のチームが参加している。
新型コロナウイルスに感染し、ヒトと似た反応を起こすハムスターにオミクロン株とデルタ株など他の変異株を感染させて比較した。デルタ株などの従来株に感染させると、感染後1週間で体重が10~15%減少する。しかし、オミクロン株の場合、体重に変化はなかった。感染させる際に使うウイルス量を増やしても体重は減らなかった。