精神科医の和田秀樹さん
精神科医の和田秀樹さん

 今回事件を起こした少年は、1年後に受験を控えた2年生だ。まだ時間はあるようにも思えるが、「面談で東大は無理という話になって心が折れた」と供述しているように、当人としては自身の成績に絶望していたようだ。

「中高一貫校では、高2までに高3の勉強を終える学校が多く、高2あたりで一気に勉強内容が難しくなります。そのため、早い段階で行き詰まりやすい。おそらく、この男子生徒はものすごく頑張って努力するタイプで、猛勉強してきたのだと思います。ですが、成績が上がらないまま努力しても、たいていは(悩みの)解決にはつながりません。やり方を変えないまま猛勉強を続けても、どうしても限界があるからです。そんな時、(成績が伸びないのは)地頭やセンスの問題だと思い込んでしまい、『俺はバカなのだ』と自己否定につながってしまう」

 和田氏自身、行き詰まった時は受験テクニックで乗り越えた。その後、受験テクニックに関する数々の著書を世に送り出してきたが、最近はかつてと比べるとテクニック本が売れなくなったという。

「テクニックを変えれば受かるかもと思ってくれる受験生がすごく少なくなったと感じます。2005年のテレビドラマ『ドラゴン桜』(1期)の放送時には東大受験ブームが起きましたが、昨年に『ドラゴン桜2』が放送された際には全くと言っていいほど東大受験ブームが起きていないのが象徴的です。今の子たちは、行き詰まったときにテクニックではなく根性で乗り越えようとしてしまう傾向があると感じます。ですが、的外れな努力ではダメ。成績が上がらないのなら、根性よりもやり方を変えたほうがいいという発想がないといけません。今は本やインターネットで受験テクニックの情報がたくさん出ているので、地頭が悪い、センスがないと嘆く前に、別の方法を試すだけ試してほしい」

 スポーツなどでは根性論では勝てないことがわかって科学的なアプローチをするようになったものの、受験の分野ではいまだに根性論の考え方が根付いているという。根性論が浸透している限り、精神的に音をあげてしまう学生は後を絶たない。

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医者の仕事に大学名はほとんど無関係