写真家・川嶋久人さんの作品展「失われたウイグル」が1月21日から東京・六本木の富士フイルムフォトサロンで開催される(大阪は2月4日から)。川嶋さんに聞いた。
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川嶋さんは昨年末、中国・新疆(しんきょう)ウイグル自治区の民族問題に追った作品で名取洋之助写真賞を受賞した。今回はその受賞作品展。
10年以上前から同自治区に暮らすウイグル族の人々を撮り続けてきた川嶋さん。作品には4年前に激変した街の様子が鮮明に写り、言葉に詰まった。さらに川嶋さんは、取材中に繰り返された警察の取り調べや当局の尾行について生々しく語った。それが、作品に写る人々の息苦しい暮らしぶりと重なり、ぞっとした。
■「ペンより写真のほうがいいんじゃないか」
川嶋さんは1986年、千葉県生まれ。早稲田大学時代から中国への強い興味があり、頻繁に湖南省など訪れ、中国の大学生らとともにハンセン病回復者の支援を行っていた。
新疆ウイグル自治区を訪れるようになったきっかけを聞くと、2009年にこの地で起きたウイグル族の学生らと治安部隊との衝突という。
「それをニュースで見て、すごく興味を持ったんです。大学も夏休み中で、暇だったから、現地に行ってみた」と、最初は軽い気持ちだったことを打ち明ける。
さらに、「イスラム教にも関心があった」。中国で多数派の漢民族とは異なり、ウイグル族の多くはイスラム教を信仰している。
「帰国後、撮影した写真を大学の友人に見せたら、『川嶋はペンより写真のほうがいいんじゃないか』と言われたんです。ぼくはもともと、新聞記者を目指していたんですけれど、その言葉で、写真をやるって、決めました」
12年、早稲田大学を卒業すると同時に、新疆ウイグル自治区のウルムチにある新疆大学に留学。さらに14年からは日本写真芸術専門学校で本格的に写真を学んだ。
「専門学校に入ったころから撮影のテーマがはっきりと見えてきました」
しかし、意外なことに、それは「政治的な問題ではなかった」と言う。
「伝統文化に生きるウイグル族の日々の暮らしを撮ること。客人をすごく大切にもてなすシルクロードの文化にめちゃくちゃ惹かれちゃって」と、川嶋さんは顔をほころばせる。