
あいつらの技を受けるのは怖いけど、かといってよけるわけにはいかない。よけたら「あいつはチキンだ」と舐められるし、しっかり受けてしっかりやり返さないと、やさぐれた男しかいないプロレスの世界で生き抜くことはできない。力でねじ伏せるか、金でねじ伏せるか、権力でねじ伏せるかの3つしかない世界で、相手の技を怖がってよけているようじゃあ、舐められて終わりだ。でも、ハンセンとブロディは俺の技を全然食らわないんだよなぁ……。英語でF~のつく汚い言葉を言いながら、とにかく押してきてやりづらかった(苦笑)。結局、ハンセンにやり返すことがほとんどできない上に、ずっと攻撃を食らい続けるのもシンドイから、最後はハンセンとタッグを組むという姑息なやり方をしたって訳だね!(笑)
とにかく、前田とのトークバトルでは、俺が前田の戦いをどう見ていたかを伝えたいし、逆に前田が俺をどう見ていたかも聞いてみたい。ただし、前田は言いたいこと言って、歯止め効かないからね……。人の悪口平気で言うし、それが一番怖いよ。俺も大人になったから、悪口はちょっと、ね? 控えてね(笑)。俺は前田に悪口は言わないけど。
前田とのトークバトルが終わったら次は誰と対戦したいかって? ジョン・トラボルタだね! 彼は『サタデー・ナイト・フィーバー』で一気にスターダムを駆け上がったけど、その後は一回人気が落ちて、また上がって演技派の俳優としてまたスポットライトを浴びて、今ではすごくいい役者だ。
彼は人生をどういう風に見ているのか。スポットライトを浴びているときも、そうでないときも、「俺はポット浴びる人間だ」と思っていたのか。役者も相撲もプロレスも次々とスターが出てくる点では同じだ。あれだけスポットライトを浴びて、そこから低迷して、また這い上がってきて。そのままダメになる人もいっぱいいるのに、どういう風にして気持ちを継続させてきたのか聞きたいね! 「ぜひ、対談したい」って、ここにちゃんと書いておこう! それか、彼が映画のプロモーションなんかで来日したときに、記者会見の中に紛れ込んで質問してみようかな(笑)。トラボルタさん、よろしく!
(構成・高橋ダイスケ)
天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ。「ミスター・プロレス」の異名をとる。63年、13歳で大相撲の二所ノ関部屋入門後、天龍の四股名で16場所在位。76年10月にプロレスに転向、全日本プロレスに入団。90年に新団体SWSに移籍、92年にはWARを旗揚げ。2010年に「天龍プロジェクト」を発足。2015年11月15日、両国国技館での引退試合をもってマット生活に幕を下ろす。