国内初の新型コロナウイルス感染者が確認されてから2年。この間、様々な政策が打ち出されたが、なかには首をかしげざるを得ないような内容のものもあった。3人の識者が、政治、経済、医療を中心に、厳しい目で730日を振り返った。
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「武漢市に滞在歴がある肺炎患者がいる」
2020年1月14日。神奈川県内の医療機関から保健所に連絡があったのが始まりだった。
その2日後の16日。この患者が、中国・武漢市に渡航歴のある神奈川県在住の中国人男性で、国内では初の感染者だと、厚生労働省が発表した。
とはいえ、このころは厚労省やWHO、専門家からは、「持続的な感染は確認されておらず、男性から感染が広がる可能性は低い」「持続的なヒトからヒトへの感染の明らかな証拠はない」「ただちに不安が広がるような状況ではないと考えられる」といった論調が出ていた。
局面が大きく変わったのは2月3日。横浜港にダイヤモンド・プリンセス号が入港してからだ。
医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんは、その際の厚労省の対応を強く批判する。
「長期間にわたり乗客を船に閉じ込めたままにしたのは、人権を無視した行為です。DMAT(災害派遣医療チーム)が派遣され、『コネクティングルーム不倫』疑惑の大坪寛子官房審議官や医系技官ら多くの人が入り、世界の医療界は大きな期待をしていました。しかし、きちんとした論文が出てくることはありませんでした」
その後、屋形船での新年会やライブ会場でクラスターが発生。吉村洋文大阪府知事が週末の大阪・兵庫往来自粛を要請し、小池百合子東京都知事はロックダウンの可能性に言及するなど知事の動きは活発化した。しかし、政府の動きは鈍かった。政治ジャーナリストの角谷浩一さんが語る。
「初動の失敗が大きかったです。春節での中国人観光客やオリンピック・パラリンピックが念頭にあったのでしょう。インバウンドを期待していましたから。3月24日にオリパラの延期が決定するまでは、対応らしい対応といえば、春休みを長くするということくらいでした」