菅首相によるオリンピック・パラリンピックへの執着も、国民の命を軽視しているのではという疑念を生んだ。各社の世論調査などでも、国民の多くが中止や延期を望んでいるという結果が出たが、その声は無視された。
分断が明確になったコロナ禍の2年間。西川さんは、経済でK字回復が起きたことを残念がる。
「上は巣ごもり需要が多かったメーカーなど。下は飲食、流通、交通、興行など。両者の差がどんどん広がっています」
個人の間でも格差が拡大しているという。
「最近は、書店に若者が多く集まっているんです。というのも彼らは生活が不安定で、クレジットカードを作れない人たち。ネットでものを買えないし、エンタメも楽しめない。それでリアル店舗に行くんです」
また、貯蓄額についても残念な結果になっていると続ける。
「アメリカではリベンジ消費が起きましたけど、日本では貯蓄に回るんですね。2020年の貯蓄は35.8兆円になりました。前年は6.9兆円でしたから、5倍以上です。将来が不安なので、貯蓄するんです。弱者に優しい社会ができて安心できない限り、経済が回ることはないでしょう」
コロナとの闘いが始まって2年が経つ今、新たな敵・オミクロン株が猛威を振るい始めた。
本来ならこれまでの蓄積でスマートに対応すべきところだが、PCR検査数は抑制したままで、人口千人当たりの一日の検査件数は0.2件(1月6日)。これはOECD加盟38カ国中37位だ。しかも野戦病院もつくらぬままに、病床確保が課題だなどと言う。
上さんは「一回こうと決めたら変更しない厚労官僚の責任は大きい」と指摘したうえで、このように明かす。
「PCR検査は早い段階で医務技監が『エラーが出る』と言ったせいで、検査数を抑制したんです」
野戦病院が増えない理由としては、尾身茂氏が理事長を務める地域医療機能推進機構(JCHO)の問題を挙げる。
「JCHOの病院には、受け入れ可能にもかかわらず空いたままにした幽霊病床がたくさんありました。野戦病院をつくるなら、その前に幽霊病床をなんとかしろという議論が出る。それを避けるためでしょう」