楽観していた政府とは異なり、国民は重大危機と捉え出す。3月29日に志村けんさんが亡くなった衝撃は、あまりにも大きかった。そして、志村さんの死から3日後に安倍晋三首相(当時。以下同)が発表した対策に、国民はあぜんとした。全世帯に2枚ずつ布マスクを配る、というものだった。
「まるで爆撃機に竹やりで挑むようなもの。国民はますます不安になりました。しかもマスクがなかなか届かない。10万円の給付金もそうでしたが、配るという大本営発表はあっても国民の手にはわたらないんです。ワクチンについても、確保しましたというアナウンスは早かったんですが、いつまで経っても日本に来ない。これも政府への不信を高めた要因です」(角谷さん)
4月7日に7都府県に、16日には全都道府県に緊急事態宣言が発出され、長い長い巣ごもり生活が始まった。オンライン、テレワーク、Zoom……それまでそれほど聞いたことがなかったものを、新しい日常として受け入れた。
「年配者の間で、遅ればせながらのYouTube鑑賞やフェイスブックデビューが相次ぎました。初めてのネット通販やウーバーイーツ。それにネットフリックスやアマゾンプライムビデオでエンターテインメントを楽しむようになりました」
そう語るのは、マーケティングコンサルタントの西川りゅうじんさん。さらに続ける。
「ステイホームはつらいですが、いいこともあったんですよ。本当に何が大切なのか考えるきっかけになりましたから。家族や友達のありがたさを知りました。仕事についていえば、全員そろわないといけない形式じみた会議や、儀式めいたお付き合いがなくなったことはよかったでしょう」
自粛要請に協力する国民を、麻生太郎副総理は「民度が高い」と称した。しかし強い同調圧力は「自粛警察」を生み、社会がギクシャクし始めた。そんな中、「上級国民」の素行が人々の怒りに火をつけた。
二階俊博自民党幹事長、菅義偉首相らが1人あたり約6万円のステーキ店で忘年会、「クラブ活動」に精を出した自民の「銀座3兄弟」、国民が自宅療養を強要されているなか無症状でも入院した石原伸晃氏……ら国会議員が批判を浴びた。