プロレスで最も非日常的な場面の一つに「マスク剥ぎ」がある。そのマスク剥ぎから生まれた関係が後世に語り継がれることも多い。攻撃と呼ぶかどうかの意見は分かれるが、マスク剥ぎに関わった過去の名レスラーたちを振り返ってみたい。
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マスク剥ぎという言葉を聞いて誰もが思い浮かべるのが小林邦昭。新日本、全日本、ジャパンプロレスなど多くのマット上において時に感情的、時に巧みにマスク剥ぎを見せてくれた。日本マットで戦った著名なマスクマンのほぼ全員に仕掛けているのもスゴい。初代タイガーマスク(佐山聡、以下タイガー)、2代目タイガー(三沢光晴)、ザ・コブラ(ジョージ高野)、ブラックタイガー。世界的スターであるミル・マスカラスのマスクにも手をかけたのには尊敬すら覚える。
小林の名が世間に知られたのは初代タイガーとの抗争だった。メキシコ遠征から帰国したばかりだった82年10月22日・広島で試合前のタイガーを襲ったことから遺恨が勃発。決定済みだった同26日・大阪府立体育会館でのWWFジュニア・ヘビー級選手権での試合が注目を集めた。小林はラフ殺法で攻め立てたうえ、最後はマスクを破り反則負け。しかしテレビで高視聴率を記録した試合での暴れっぷりはインパクトが大きく「虎ハンター」がここに誕生した。
マスク剥ぎは場内を盛り上げるために用いられる。観客はヒートアップし善悪が明確になることで感情移入しやすくなりその試合だけでなく、当日の興行が最後まで熱を帯びたものになる。初代タイガーは国民的ヒーローでありマスクに手をかけることは衝撃的だった。会場では小林にモノが投げられ、カミソリ入りの手紙が何通も送りつけられた。
プロレスラーなら強いチャンピオン、ヒーローになることが夢のはずだ。しかし小林は現実を見据えプロレス業界で生き延びていく道を見つ出した。団体が売り出そうとしたマスクマンに対してはマスク剥ぎを敢行した。人気絶頂の初代タイガーが引退した後はザ・コブラをターゲットにした。