脳がコントロールする「食欲」には、「生きていくために食べるための食欲」と「快感を得るための食欲」の2種類があります。人を太らせるための元凶は、後者の食欲にあります。「快感を得る」というだけあって、「快感回路」という場所でドーパミンの放出をうけた脳は、麻薬を使った際の快感と同種の、抗いようがない快感を得ているのです。

 快感回路は、食欲だけでなく、快感を伴うあらゆる行動に関与しているため、この食欲を制御しようとすると、「何かを楽しいと思ったりする気持ち」まで抑えられてしまいます。それは、人にとって「生きていく喜びがなくなってしまう」ということになります。

 つまり、「食欲は意志の力では決してコントロールできない」といえます。どんなダイエット法も人間の本性にはかなわないのです。

 以降では、代表的なダイエット法のうち3つを取り上げて、それぞれの問題点について紹介していきます。

■糖質制限という幻想

 ごはんやパン、麺類などの炭水化物など、「糖がつながってできている食べ物」をすべて制限するのが糖質制限ダイエットです。

 通常、成人が摂取すべき一日あたりの糖質量は200~300グラムです。現代の日本は飽食状態にあり、必要以上に炭水化物をとっているため、それを「適正量の糖質摂取に是正する」糖質制限については私も反対ではありません。

 しかし、現在盛んに行われている糖質制限では、これを50グラム以下に抑える過激なやり方もあるのです。

 この方法を推奨する人たちは、「体はエネルギー源として糖質(血糖)→脂質(体脂肪)の順番で使用する。食事から糖質をとっているあいだは、食事の糖質が最初につかわれるから脂質(脂肪)が燃えにくい。だから糖質の摂取をなくしてしまえば脂質(脂肪)が燃やせてやせる」と説明しています。

 けれども、この考え方は大きな間違いです。人間の体は機械のようにエネルギーを順番に使うようにはできていません。体はエネルギー源として、糖、脂質などを同時に消費し始めるのです。

 このダイエットの問題点は、糖質をとらないので、筋肉でのエネルギー源として糖質の使用が制限されます。すると、疲労感が強くなってしまうのです。やせても、健康を損なってしまっては意味がありません。

次のページ
最大の難点は「継続できないこと」