昨夏の東京五輪にスケートボードで出場した平野歩夢が2月の北京冬季五輪スノーボードで悲願の金メダルを狙う。AERA 2022年2月7日号は「北京五輪」特集。
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空中で縦3回転、横4回転するスノーボード・ハーフパイプの超大技「トリプルコーク1440」──。
北京五輪の金メダル争いの鍵を握るといわれるこの技を、世界で初めて成功させたのは平野歩夢(23)だった。昨年12月、アメリカで開かれた招待大会、デューツアーでのことだ。
冬季五輪2大会連続銀メダルの平野を長年取材する、スノーボードジャーナリストの野上大介さんは、こう解説する。
「強い遠心力がかかるので着地がとても難しい。最終ヒットに組み込めば、立つだけでいいので成功の可能性は高まりますが、歩夢は着地の完成度が最も必要とされる1ヒット目に出した。成功する確信があってのことだったと思います。この技は今、日本で3選手が挑戦を表明していますが、4年間スノーボードに打ち込んできた(戸塚)優斗や平野流佳(るか)ではなく、8月5日までスケートボードをやっていた歩夢だというのは驚きです」
■似て非なる二つの競技
スケートボードとスノーボードは、板に横乗りするスタイルは同じだが、平野歩が「野球とバスケットボールほど違う」と言うほど似て非なる競技だ。ライバルたちは4年間かけて北京五輪に向けた準備をしてきた。一方、平野歩は夏季五輪から冬季五輪まで半年しか練習期間がなかった。異例の二刀流の挑戦は、少なくとも技術面では圧倒的に不利だとされてきた。自身も不安にかられ、夜中に汗びっしょりになって起きたこともあった、と野上さんに明かしている。
だが、この挑戦は滑りに進化をもたらした。
スケートボードは足が板に固定されていないため、選手たちは状況やコースによって足の位置を微妙に変える。平野歩は、スケートボードで得た技術を着地や雪面を加速する動きなどに生かした。