昨夏の東京五輪スケートボード・パークで予選落ちしたが、「スケートボードが自分を強くさせてくれた」と話した(Getty Images)
昨夏の東京五輪スケートボード・パークで予選落ちしたが、「スケートボードが自分を強くさせてくれた」と話した(Getty Images)

「4歳から両方やってきた歩夢の滑りは、もともとスケートボードとスノーボードが融合していましたが、初めてスケートボードに軸足を置いてトレーニングしたことで、さらに一段も二段も上になった。歩夢にしかできない滑りです」(野上さん)

 今年1月のワールドカップ(W杯)では2戦とも優勝。冬季競技の世界最高峰のプロ大会、ウィンターXゲームズでは、トリプルコーク1440を完璧に決めて2位となった。

 一方、昨季の世界選手権覇者、戸塚は1月のW杯で9位、12位にとどまった。Xゲームズには出場せず、五輪に向けて調整を進める。野上さんは言う。

「優斗が持っている技をパーフェクトに決めたら歩夢は勝てません。優斗は昨年まではほぼミスなく決めていたのに、雪上復帰して間もない歩夢の卓越した滑りに精神的に追い込まれている。歩夢がハーフパイプ界全体を支配しているように感じます」

 二刀流挑戦による精神面での成長も大きい。平野歩は1月25日の会見で、こう話した。

「初めて経験するようなことに挑戦し続けていると、感じたことのない気持ちや、普段の自分とはまた違う自分と向き合わなきゃいけない状況を感じました。それは非日常的ですごく刺激的で。知らない自分に向き合っていたことが、今を作り出していると思います」

 平野歩は小学4年生のときに世界的スノーボードブランド、バートンと契約を結んだ。同社は海外遠征のコーディネートもし、平野歩と寝食を共にしながら支援してきた。バートンジャパンの石原公司さん(47)はこう話す。

「もともと歩夢は勝つことよりも自分の表現を大事にしてきた選手ですが、世界中で誰もしていないチャレンジをしたいというのは本当に彼らしいと思いました。スケートボードに挑戦したことで、スノーボードでは常に追われる立場だった歩夢が、チャレンジする気持ちを取り戻せたことも大きい」

■大事に使い続ける姿勢

 幼い頃から練習熱心で、必要なことを徹底的に追求する姿が印象的だったという。用具へのこだわりも強い。石原さんは明かす。

「歩夢は、気に入ったものをすごく長く使うんです。メーカーの人間としては、モデルチェンジをしているので新しい製品を使ってほしいんですけどね(笑)。でも、ものへのこだわりや、大事に使い続ける姿勢は、スタイルを大事にするスノーボーダーらしくていいなと思います」

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