ここで重要なのは、売値は「市場」が決めているという点です。仲介会社の査定が高くても、売れなければ値を下げざるを得ないのです。つまり中古マンション価格は市場、すなわち買い手の動向によって決まる側面があります。価格は買い手が決めているようなものなのです。

 一方、新築マンションも、売れなければ値下げをしなければならない事態がないわけではありません。しかし、企業経営の立場から値引きの可能性は限りなくゼロに近いのが実態です。

 前述の通り、分譲マンションの利益率は10%程度と多くはないからです。また、値引き販売が定価販売した先行契約者に知られると、非常に厄介なことになるため、値引き販売に踏み切るためには、水面下でひそかに進めるほかないという難しさも抱えているのです。

 新築マンションの価格は「売り手デベロッパー」が決めており。市場や買い手の意向は反映されにくい構造になっているのです。

■売れなくても値引きはしない理由

 いくら新築マンション市場が活況とはいえ、分譲価格が高ければ売れ残りは発生します。

 新築マンションは着工からすぐに販売を開始しますが、数次に分けて販売を行うのが通例です。「第1期新発売」や「最終期新発売」といった売り出し方です。

 たとえば100戸のマンションを第1期で20戸売り出して完売すれば、次の広告では「おかげ様で第1期完売。引き続き第2期を発売」などと宣伝します。

 それを見た買い手候補者は、人気のあるマンションだと錯覚します。ここが売り手の狙いなのですが、実際は20戸しか売れていないわけです。これを繰り返して行くのですが、この手法が通用するのは最初の半年か長くても1年です。よく売れているように見せ続けても、実際には竣工した時点で売れたのは7割で、3割は売れ残っている新築マンションも少なくありません。

 いわゆる「完成在庫」となってもデベロッパーが値引きをしないのには理由があります。前述したように、今は適したマンション用地が少ないことから、新築マンションの供給戸数は10年前に比べると半減しています。価格が高くても競合する物件が少ないことから、時間はかかっても売り続けていれば、やがては買い手が見つかり、完売してしまうのです。とはいえ、完成在庫を抱える期間は短くしたいので、売り主業者は販売促進のために、あの手この手を繰り出しますが、値引きという「奥の手」を打ち出すことはほとんどありません。

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マンション価格が下がる環境要因がない