立地条件の良い土地、しかも規模の大きい土地であれば、付加価値の高いマンションが建設できるので、デベロッパーは強気な姿勢で用地買収に臨みます。マンション用地は多くが競争入札方式なので、高値で入札したほうが購入の可能性は高いため、マンション業者にとって垂涎の用地は競りあがって、どんどん高くなっていくのです。

 次に建築費ですが、これも年々値上がりしています。

 2011年3月の東日本大震災以降、多くの職人が復興事業に従事することになったため、職人の不足が指摘されてきました。また、そこに東京五輪の競技施設建設工事が重なったため、資材費や人件費が値上がり、建築費はずっと上昇基調にあります。国土交通省の「建築工事費デフレータ」(21年10月29日付)をみると、2015年度を基準値「100」とすると2020年度は7・9ポイントの上昇、2011年から比較すると13・2ポイントも上がっています。人件費については、同じく国交省の「公共工事設計労務単価」を参照します。算出方法が変更された2013年度から比較しても、2021年度は30%以上値上がりしています。2013年以降は不動産市況が好調でマンションのみならず、一戸建て住宅もどんどん建てられていることから、この傾向はしばらく続くものと思われます。

■新築マンション価格は「売り手」が決める

 前述したように、今や東京23区内の新築マンションの価格は1億円を超えることも多く、庶民の手が届く価格ではなくなっています。しかし、いくら2大原価が上昇しているとはいえ、需要と供給のバランスが崩れれば価格は調整されて下がりそうなものです。しかし、新築マンションはそうはなりません。次にその理由をご説明します。

 わかりやすいように中古マンションと比較してみましょう。中古マンションは、まず「売り主」である現居住者が仲介会社を通して、周辺相場などを参考に売り出し価格を決めます。売り出し価格を決めたら、依頼した業者の独自サイトとSUUMOやHOMESといった大型のサイトに掲載して買い手を募ることになります。つまり、すぐに「市場」に出して反応をみます。広告の効果で内覧希望者が多ければいいのですが、非常に少ない場合もあります。この価格では売れないとわかれば、売り主は価格の引き下げを決断することになります。

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消費者が「売れている」と錯覚する理由