新築マンションの高騰が止まらない。1月25日に公表された不動産経済研究所の調査で、2021年に首都圏で発売された新築マンションの平均価格が6260万円になったことが明らかになった。バブル期の1990年に記録した6123万円を超える価格となった。また同研究所の調査では、東京23区に限ると、2021年8月の平均価格は1億812万円と1億超えを記録した。なぜ新築マンションはここまで高くなってしまったのか。大手マンション分譲会社の元社員で『マンション大全』(朝日新聞出版)などの著書もあるマンション評論家の三井健太氏がその“カラクリ”を解説した。
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私は大手マンション分譲会社に長年勤務し、設計、企画から営業までマンションビジネスにまつわるほとんどの実務を経験しました。そのため、新築マンションの価格がどのように決まっているかは経験則から分かっています。
そこで、まずは新築マンションを売り出すデベロッパーが、どのように価格を決めているか、そのプロセスから説明しましょう。
たとえば、1戸の平均価格が7000万円のマンションで、総戸数が200戸くらいの「都区内の大規模マンション」を例に考えてみましょう。
概算ですが、この立地・規模感だと「用地費」が約60億円、「建設費」が約60億円というのが2大原価になります。そこに広告宣伝費が約5億円、販売委託費が約5億円、原価総額は130億円くらいでしょう。そこにデベの利益約13億円が乗ってきます。
つまり、マンションにかかる原価のほとんどは「用地費」と「建築費」なのです。この2大原価の上昇がマンション価格が高騰し続けている一番の要因です。
昨今はマンション建設に向く売り地が少ないので、条件の良い売り地には買い手が殺到します。その結果、土地の価格は地主の期待以上になり、どんどんつり上がっていきます。
最寄り駅が人気のあるターミナル駅、駅に近い、環境が良いなどの条件がそろえば分譲価格が高くなっても売れると判断し、デベロッパーは高値でも用地を取得しようとします。それに加えて重要視されるのは、敷地の広さです。広い敷地には大型のマンションが建てられるので、建築費を抑え込むことができます。マンションを建設するゼネコンもできるだけ大型案件を受注したいと考えているので競争も激しくなり、結果的にデベロッパーの思惑に近い金額で発注できるのです。