杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』など。静岡市で少人数制塾「杉山塾」(http://fancynancy.jp/sugiyamajuku/)を運営中。ツイッターのアカウントは@suginat
杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』など。静岡市で少人数制塾「杉山塾」(http://fancynancy.jp/sugiyamajuku/)を運営中。ツイッターのアカウントは@suginat

 その子の家は、父親も母親も有名な大学を出ており、その子には、「医者になってもらいたい」と大きな期待をかけていたのです。

 この家庭のケースでは、親が子どもの教育に相当なお金や手間をかけています。しかし、果たしてこれを英才教育と呼んでいいものでしょうか。

 きっと、自分たちは受験をがんばり、おかげで何かしらのメリットがあったがために、子どもにもそれを伝えたいのだと思います。

 しかし、子どもにはおのおのの人格があり、内向的な子、外遊びが好きな子、親の言うことを素直に聞く子、自分のやりたいことを優先する子など、十人十色です。遺伝子的に似ている要素はあるかもしれませんが、決して自分たちと同じやり方でがんばれるわけではないのです。

■子どもが、親の欲求を満たす道具になっている

 また以前、うつの本を書いたときにもらった手紙で、非常に印象に残っているものがあります。

 大学受験の勉強中だという生徒からでしたが、親から「早慶以上の大学にいきなさい。それ以外は進学を許しません」と言われ、試験に落ちるのが怖くて気が滅入り、勉強が手につかなくなってしまったのだそうです。

「このままでは点数が足りないので落ちてしまう」「今後どうしたらいいかわからない」という内容が書かれていました。

 この話を聞いたとき、子どもが、親の欲求を満たす単なる道具のようになっていると感じました。

 私は、子どもが船だとしたら、親は子どもの「港」のような存在であるべきだと考えています。

 疲れたら、「少し休んでいけば?」と受け入れて、もし道に迷っていたら、地図を渡して方向を教えてあげる。そして船が出発するときには、必要な荷物を持たせて応援する、というようなイメージです。

 しかし、親の中には、船と一緒についていくどころか、まるで自分が船の「船長」であるような振る舞いをする人がいます。

 進む方向を勝手に決めてしまい、どこに行って何をすべきかを命令するのです。

 もし、違う方向に向かおうとすると怒り始め、少しでもスピードが落ちてしまうと、「本当にがんばっているのか?」と、機嫌が悪くなります。

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