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オレンジ色のベレー帽をかぶったおちゃめなイルカに「CRAZY RESCUE(クレイジーレスキュー)」の文字が重なったイラスト。
そんな旗がはためく写真を指さし、「特救隊の隊旗です」と、写真家・米田堅持さんは説明する。
特救隊とは、海上保安庁特殊救難隊のこと。米田さんは2年前から特救隊員の姿を追い続けてきた。
全国に配属された約1万4400人の海上保安官のうち、特救隊に所属するのはわずか37人。彼らは極めて高度な技術と体力、知識を備えた海難救助のスペシャリストだ。
海上保安庁はさまざまな海難事故に対応するが、なかでも特救隊は「最後のとりで」と、米田さんは言う。
特救隊の拠点、羽田特殊救難基地は羽田空港の一角にあり、要請があればただちに全国各地に駆けつける。
「彼らが出動するのはもっとも困難な現場です。火災を起こした毒劇物を積載した貨物船、荒天下で座礁した船の乗組員の救助とか」
■訓練中のけがは当たり前
特救隊が発足したのは1975年。創成期は相当危険な任務もあったそうで、「遭難した貨物船のコンテナのすき間に転落してしまったとか。そういう話がいっぱいある」。
幸い、発足以来47年間、殉職者は1人も出していない一方、「訓練中にけがをするなんて話はよく聞きます。彼らも訓練でできないことは本番でもできないですから、ふだんからめちゃくちゃきつい訓練をするんです」。
隊員の年齢は20代から30代。過酷な任務のため、在任期間は「長くても5、6年」と言う。
「強靭(きょうじん)な体力がないと特救隊を続けられないんですよ。よく、彼らのことを『頭の中まで筋肉だ』なんて、敬意を込めて揶揄(やゆ)する人がいますけれど、それがしゃれにならないくらいすごい」と言いながら、垂直に垂らした細いロープを手足だけで登る隊員の写真を見せてくれる。
「彼らはこれを、ちゃっちゃっと、登ってくるんです」。ふつうの人ならロープを登るどころか、ぶら下がっているだけ精いっぱいだろう。
漫画「海猿」のなかに、海上保安官の主人公が「潜水士」になるまでのハードな訓練の様子が描かれているが、特救隊はそんな潜水士たちのトップ集団でもある。